すべては無から始まった 中編
僕には何もない。好きなものも、嫌いなものも。
友達というものもいない、親もいない、感情もない。
自分の名前すらも。
でも、1つ何かあるとするならば、
・・・何も。そう、何も。
「・・・ん」
気がつくと僕は、ゴツゴツとした地面に横たわっていた。
「・・・」
しかも、
「・・・」
1人だと不安になる。僕は町の外に出た事がない。
「・・・僕にたくさん知識があったらいいのにな」
けど、それも無理な話だ。僕はある程度の常識しか、
・・・ある程度の常識っていうのは、言葉や、
「・・・グルルル・・・」
「・・・あ」
僕がボーッとしていると、紫色の、
紫色の魔物は、僕に体当たりをしてきた。
「・・・痛い」
でも、今の痛みは今までより本当に軽い方だ。転んだだけだし。
「ガウッガウッ」
魔物は僕を倒すと、笑った顔で自慢気に鳴き出した。・・・
魔物は普段、人間に見つかったら跡形もなく消される。
・・・改めて考えてみると、魔物も魔族も、同じようなものだな、
「ガウッ、ガウッ!」
魔物は、『参ったか、降参しろ!』
「・・・ガウッ‼︎ガウッ‼︎ガウッ‼︎」
魔物は、手を出口がある方向に向けて吠え出した。
「・・・ここから出ろって言いたいの?」
なんとなく、聞いてみる。
「ガウッ‼︎」
魔物は首を縦に振った。言葉は通じるみたいだ。不思議だ。
「・・・わかった。でも、ロンジェさんが見つかったら、で、
「ガウッ」
魔物は複雑そうな顔をすると、仕方ないな、
「・・・ありがとう、魔物・・・さん?」
「ガウッ‼︎‼︎」
「いたっ・・・」
また魔物は体当たりをしてきた。今度はなんだというのか。
「ヴーッ」
魔物は、鋭く尖った爪で、地面に、いびつ・・・
「ブラックハート・・・」
読めた部分がそこだけだった。
「・・・これがキミの名前?」
「ガウッ」
魔物は首を縦に振った。どうやらそのようらしい。
「・・・ブラックハート・・・か」
黒い心って意味だよね、多分。黒い心か・・・。
・・・ん?「さん」ってつけたほうがいいのかな。この子、
・・・悩みに悩んだあげく、さんをつけることにした。
「ガウッ!」
ブラックハートさんは、背を向けて歩き出した。
「・・・ついていけば、いいの?」
「ガウッ」
ブラックハートさんは、首を縦に振った。
「・・・ここは・・・」
ブラックハートさんに着いていって辿り着いた場所は、
洞窟の天上の隙間に太陽の光が漏れていて、
・・・あれ?なんでかな。クローバーを見ていると・・・涙が・・
「・・・っ」
「・・・ガウッ」
「・・・っ、ブラック・・・ハートさん・・・どうして、ここに、
「ガウッ‼︎」
ブラックハートさんは、クローバー畑の上の、
叩いた場所には、銀色の糸と茶色い糸が散らばっていた。
銀色の糸・・・あ、そういえば、ロンジェさん、銀髪だった・・・
「・・・早く、探さないと。」
そう思い、僕はロンジェさんを探そうと立ち上がり、
「っ・・・⁉︎」
「・・・よお、魔族」
今、僕が最も会いたくないものに会ってしまった。人間だ。
僕はびっくりして、腰を抜かしてしまった。
「・・・どうして、ここが・・・わかって」
何でだろうか。今までは平気だった人間が、今は怖く感じる。
「ククッ、大抵、魔族は脱獄するとき、
・・・ロンジェさん・・・人間に行動、読まれてたみたいだよ。
「ガウッ‼︎ガウッ‼︎」
ブラックハートさんは、人間を睨みつけると、
「あ?なんだこの魔物。失せろ」
「ギャウッッ‼︎‼︎」
けど、人間の反撃を受け、ブラックハートさんは傷を負い、
「フン、魔物ごときが、人間様に歯向かうんじゃないぜ。・・・
「・・・ごめ・・・ごめんなさ・・・」
いつもは人間に慣れてるはずなのに。今はなんだか・・・
「反逆罪だ。町に帰ったら、お前は火あぶりな。ククッ」
・・・!火あぶり・・・普段は、ナイフで刺すだけだったのに・・
「安心しろ。魔族は火あぶりごときで死にはしない。
人間は、僕を捕らえようとするが、僕は、
「・・・あん?」
今の僕は、なんて愚かなんだろうか。いつものように、
「・・・聞きたい、事があります」
「・・・一問だけ許してやる。なんだ?」
「・・・ロンジェさん・・・ロンジェさんはどこに・・・」
今見た赤く汚れている場所と銀色の糸と茶色い糸・・・
「ああ?ロンジェ?」
「・・・銀髪の、新しく捕まっていた子・・・です」
「・・・ああ、あいつか・・・・・・ククッ、ククククッ‼︎
・・・何が可笑しいんだろう?
「・・・ククッ、魔族って本当、
「・・・?一体、どういう・・・」
「・・・ククッ、あの魔族ならこの洞窟から逃げたさ。
「・・・え。」
僕を・・・おいて?
「お前は、
「・・・」
・・・ロンジェさんが・・・?あはは、そうだよね。やっぱり、
心臓を刺された時より、胸が痛い。・・・もしかしたら僕は、
「その点、俺たち人間は、使い道がないお前らを、
「・・・・・・はい」
・・・何もない僕が、誰かの役に立てたなら・・・それで・・・・
「・・・ま、情がふかーい人間様も、
「ギャウッッ⁉︎」
「・・・!」
人間は、倒れているブラックハートさんを、蹴飛ばした。
「ガルル・・・・・・‼︎」
「っはっはっは‼︎ざまぁないぜ。」
人間は、ケラケラと笑うと、再び僕に近づいた。
・・・でも、僕は、また愚かなことをしてしまった。
「・・・・・・‼︎・・・‼︎」
「な、なんだ⁉︎まさか、力が⁉︎ありえない、
無我夢中で、僕は無鉄砲に闇を放った。すると、
「ウワァァァァ‼︎」
「・・・っ、この!!」
「アアアアァァ‼︎・・・っ⁉︎」
人間は、自分に魔法があたりそうになると、
「ガウッ⁉︎」
「・・・あっ⁉︎」
僕は、今、正気を取り戻せた、けど・・・‼︎僕が放った闇は、
「・・・ハッ!や、やっぱり魔族は最低だな!よ、
「・・・・・・っ」
・・・やってしまった。僕のせいで、
「は、ははははは‼︎さて、
怖い・・・。
今は人間が怖いんじゃない。処刑されるのが怖いんじゃない。
「・・・あ・・・あぁ・・・」
「はははははっ‼︎」
人間はブラックハートさんを蔑み見ながら、面白可笑しく笑う。
けど、やはり僕は愚かだったんだ。
一歩一歩と後ろへ進む。
「・・・あっ」
足のバランスがとれなくなり、僕は氷のように冷たい、
「・・・っ・・・‼︎くくっ、はーはっはっはっ‼︎
「っ、うっ・・・」
水はものすごい勢いでぶくぶくと泡を吐いている僕をどこかへ運ん
僕は水に逆らおうとするけど、水は逆らう事を許してくれない。
「っ・・・」
僕は必死に、上へ、上へと手を伸ばす。けれど、
・・・あ、
今気付いた。
今更。
・・・僕はなんて馬鹿なんだろう。
手を伸ばしているってことは、
僕には感情があったんだ。少しはあったんだ。空っぽの僕にも。
でも、感情があるとわかったからこそわかる。
僕には・・・・・・誰もいない。僕を愛してくれる人なんて・・・
どんなに手を伸ばしたって、助けてくれる人なんて、
・・・あはは、本当馬鹿だな、僕。
・・・それに、
・・・わからない。自分のとっている行動が。
「・・・っ!」
・・・ああ、駄目だ。もう、息が出来ない。・・・
人間は僕を処刑すると言っていた。なら、
目を瞑る前に・・・最期に伸ばした手を見る。
ー続く。
中編終わりました!( ´ ▽ ` )
次回は恐らくラストです((
今回はブラックハートってのがでてきましたが、
一体誰なのかは番外編で‼︎((
名無し「…番外編だすんだ。」
ロン「よくネタが尽きないね」
ブ「ガル…」
マイ「君たち黙ろうか」
そうそう、前編のコメントであったように、
いやぁ、コメント見て、リトリト愛されてるなぁ、
よかったね、リトリト‼︎
リト「……どうでもいいし」((
あ、さらに言うと、今回でてきた人間さん、一応名前あるんです。
アザ「俺の扱いひでぇ((((;゚Д゚)))))))」
ではでは、最後まで見てくださってありがとうございましたー( ´ ▽ ` )ノ