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不定期更新しますですー

すべては無から始まった 中編

僕には何もない。好きなものも、嫌いなものも。

友達というものもいない、親もいない、感情もない。

自分の名前すらも。

でも、1つ何かあるとするならば、それは自分が魔族という化け物であることだけだ。それ以外、何もない。

・・・何も。そう、何も。










「・・・ん」

気がつくと僕は、ゴツゴツとした地面に横たわっていた。

「・・・」

しかも、いつの間にか先ほどロンジェさんと会話していた場所とは違う場所にいる。・・・あたりを見回す。ロンジェさんがいない。あれ?どこへいったんだろうか。

「・・・」

1人だと不安になる。僕は町の外に出た事がない。奴隷以外の生活の仕方を知らない。だから、今何をどうすればいいか全くわからない。

「・・・僕にたくさん知識があったらいいのにな」

けど、それも無理な話だ。僕はある程度の常識しか、人間たちに教えられていないし、知る事を許してくれなかったし。

・・・ある程度の常識っていうのは、言葉や、人間と魔族に関しての事だけど。

「・・・グルルル・・・」

「・・・あ」

僕がボーッとしていると、紫色の、狼のようなライオンのような形をした小さい魔物が現れた。

紫色の魔物は、僕に体当たりをしてきた。僕はそれでよろけてしまった。
「・・・痛い」

でも、今の痛みは今までより本当に軽い方だ。転んだだけだし。

「ガウッガウッ」

魔物は僕を倒すと、笑った顔で自慢気に鳴き出した。・・・僕はそれに驚いた。・・・魔物にも、感情はあるんだ・・・と。

魔物は普段、人間に見つかったら跡形もなく消される。または僕たち魔族が消す。例え、人間に害を与えていなかったとしても、いずれ害を与えるんだと思われて。
・・・改めて考えてみると、魔物も魔族も、同じようなものだな、と思う。・・・それを僕は、消してきたのか。人間に命令されていたとはいえ、酷いやつだな、僕は。

「ガウッ、ガウッ!」

魔物は、『参ったか、降参しろ!』とでも言いたいかのように吠えてくる。・・・別に、僕、勝負とかしてないんだけど。

「・・・ガウッ‼︎ガウッ‼︎ガウッ‼︎」

魔物は、手を出口がある方向に向けて吠え出した。

「・・・ここから出ろって言いたいの?」

なんとなく、聞いてみる。

「ガウッ‼︎」

魔物は首を縦に振った。言葉は通じるみたいだ。不思議だ。やっぱり魔物にも、感情はあるんだね。・・・僕は・・・あるのかな。

「・・・わかった。でも、ロンジェさんが見つかったら、で、いいかな?」

「ガウッ」

魔物は複雑そうな顔をすると、仕方ないな、という表情で首を縦に振ってくれた。

「・・・ありがとう、魔物・・・さん?」

「ガウッ‼︎‼︎」

「いたっ・・・」

また魔物は体当たりをしてきた。今度はなんだというのか。

「ヴーッ」

魔物は、鋭く尖った爪で、地面に、いびつ・・・といっては失礼だけれど、読みにくい文字を書いた。・・・魔物が書いた文字は、最初の部分は何て書いてあるのか全くわからなかったけれど、後半はなんとか読めた。

ブラックハート・・・」

読めた部分がそこだけだった。

「・・・これがキミの名前?」

「ガウッ」

魔物は首を縦に振った。どうやらそのようらしい。

「・・・ブラックハート・・・か」

黒い心って意味だよね、多分。黒い心か・・・。ちゃんと名前あるんだな。・・・ブラックハートさんか。
・・・ん?「さん」ってつけたほうがいいのかな。この子、魔物だけど・・・名前ちゃんとある見たみたいだし・・・うーん・・・



・・・悩みに悩んだあげく、さんをつけることにした。

「ガウッ!」

ブラックハートさんは、背を向けて歩き出した。そして顔だけを振り向き、『ついてこい』という表情で吠えた。

「・・・ついていけば、いいの?」

「ガウッ」

ブラックハートさんは、首を縦に振った。どうやらそのようらしい。・・・行ってみようか。



「・・・ここは・・・」

ブラックハートさんに着いていって辿り着いた場所は、なんともいえない美しい場所だった。

洞窟の天上の隙間に太陽の光が漏れていて、その光で綺麗に透き通った川がキラキラと輝いていて、勢いよく流れている。さらにその川の周りにはクローバー畑がいっぱい広がっていた。

・・・あれ?なんでかな。クローバーを見ていると・・・涙が・・・でてきた。・・・何で?

「・・・っ」

「・・・ガウッ」

「・・・っ、ブラック・・・ハートさん・・・どうして、ここに、僕を・・・?」

「ガウッ‼︎」

ブラックハートさんは、クローバー畑の上の、少し赤く汚れている場所をポンポンと手で叩いた。そして僕は腰を下ろしてその場所を見る。

叩いた場所には、銀色の糸と茶色い糸が散らばっていた。

銀色の糸・・・あ、そういえば、ロンジェさん、銀髪だった・・・そしてこの茶色い糸はまさか人間の・・・あ、ロンジェさんに何かあったのかな?

「・・・早く、探さないと。」

そう思い、僕はロンジェさんを探そうと立ち上がり、その場を立ち去ろうとした。すると

「っ・・・⁉︎」






「・・・よお、魔族」

今、僕が最も会いたくないものに会ってしまった。人間だ。

僕はびっくりして、腰を抜かしてしまった。

「・・・どうして、ここが・・・わかって」

何でだろうか。今までは平気だった人間が、今は怖く感じる。どうして?

「ククッ、大抵、魔族は脱獄するとき、この洞窟に避難するんだよ。俺はそれをよく知ってるからなぁ・・・ククッ」

・・・ロンジェさん・・・人間に行動、読まれてたみたいだよ。

「ガウッ‼︎ガウッ‼︎」

ブラックハートさんは、人間を睨みつけると、勢いよく体当たりをした。

「あ?なんだこの魔物。失せろ」

「ギャウッッ‼︎‼︎」

けど、人間の反撃を受け、ブラックハートさんは傷を負い、倒れてしまった。

「フン、魔物ごときが、人間様に歯向かうんじゃないぜ。・・・お前もな、魔族。」

「・・・ごめ・・・ごめんなさ・・・」

いつもは人間に慣れてるはずなのに。今はなんだか・・・恐怖というのだろうか、それを感じる。

「反逆罪だ。町に帰ったら、お前は火あぶりな。ククッ」

・・・!火あぶり・・・普段は、ナイフで刺すだけだったのに・・・やっぱり反逆罪は、レベルが違うのか・・・

「安心しろ。魔族は火あぶりごときで死にはしない。魔族は成人まで生かしておかなきゃならねぇからな。」

人間は、僕を捕らえようとするが、僕は、人間から一歩後ろに下がった。

「・・・あん?」

今の僕は、なんて愚かなんだろうか。いつものように、言う事を聞いていれば、怒られずに済むのに。でも、ロンジェさんのおかげかもしれない。反抗心を持てるようになったのは。でも、反抗心といっても、大したものじゃない。ただ、ただあれを聞くだけだ。そのあとはいつものように戻るだけだ。

「・・・聞きたい、事があります」

「・・・一問だけ許してやる。なんだ?」

「・・・ロンジェさん・・・ロンジェさんはどこに・・・」

今見た赤く汚れている場所と銀色の糸と茶色い糸・・・多分ロンジェさんと人間が争った跡だ。・・・何か知ってるかもしれない・・・。

「ああ?ロンジェ?」

「・・・銀髪の、新しく捕まっていた子・・・です」

「・・・ああ、あいつか・・・・・・ククッ、ククククッ‼︎っはははは‼︎」

・・・何が可笑しいんだろう?

「・・・ククッ、魔族って本当、最低で最っっ悪な生き物だよなぁ‼︎っははははははは‼︎‼︎‼︎」

「・・・?一体、どういう・・・」

「・・・ククッ、あの魔族ならこの洞窟から逃げたさ。お前をおいてな。」

「・・・え。」

僕を・・・おいて?

「お前は、自分が俺らから逃げるための囮として使われていたんだ。信じられないか?だろうなぁ。でも、魔族とはそういうものさ。ククッ。簡単に裏切り簡単に捨てる。情がない生き物だぜ。魔族は。」

「・・・」

・・・ロンジェさんが・・・?あはは、そうだよね。やっぱり、僕は・・・利用されるだけの・・・・・・





心臓を刺された時より、胸が痛い。・・・もしかしたら僕は、少し期待していたのかもしれない。ロンジェさんは、こんな僕を助けてくれたんだって。でも、それは思い込みだったようで。・・・そもそも、こんな僕が、助けてもらえるなんて、そんなこと、ありえなかったんだ。・・・ははっ。


「その点、俺たち人間は、使い道がないお前らを、成人になるまで大事にこき使ってやってるんだから、ありがたいだろう?」

「・・・・・・はい」


・・・何もない僕が、誰かの役に立てたなら・・・それで・・・・・・なんて本当はそんな事思ってない。でも、肯定しないと、もっともっと酷い事される気がして。

「・・・ま、情がふかーい人間様も、魔物までは面倒みきれないがなぁ、ははっ」

「ギャウッッ⁉︎」

「・・・!」

人間は、倒れているブラックハートさんを、蹴飛ばした。

「ガルル・・・・・・‼︎」

「っはっはっは‼︎ざまぁないぜ。」

人間は、ケラケラと笑うと、再び僕に近づいた。早く連れて帰るために。

・・・でも、僕は、また愚かなことをしてしまった。許せなかったんだ。心があるブラックハートさんを傷つけたのが・・・だから・・・

「・・・・・・‼︎・・・‼︎」

「な、なんだ⁉︎まさか、力が⁉︎ありえない、あのくらいの力は成人にならないと発動しないはず‼︎やっぱり、あいつは・・・‼︎⁉︎」

無我夢中で、僕は無鉄砲に闇を放った。すると、地面がどんどん崩れていき、地割れが起きた。だけど今の僕はそんな事気にもせず、ただただ叫びながら、暴走していた。

「ウワァァァァ‼︎」

「・・・っ、この!!」

「アアアアァァ‼︎・・・っ⁉︎」

人間は、自分に魔法があたりそうになると、ブラックハートさんを掴み、自分の盾にした。

「ガウッ⁉︎」

「・・・あっ⁉︎」

僕は、今、正気を取り戻せた、けど・・・‼︎僕が放った闇は、ブラックハートさんにどんどん吸収されていき、ブラックハートさんはその闇で苦しみだしてしまっていた。

「・・・ハッ!や、やっぱり魔族は最低だな!よ、弱ってる魔物にまで攻撃するなんてよ・・・!」

「・・・・・・っ」

・・・やってしまった。僕のせいで、人間をここに招いた僕のせいで傷ついたブラックハートさんを、僕が攻撃してしまった。

「は、ははははは‼︎さて、このことをあのお方に報告しないとな・・・!こいつは予定より早く処刑した方がいいってよ・・・!ふはははは‼︎」

怖い・・・。

今は人間が怖いんじゃない。処刑されるのが怖いんじゃない。僕のせいで誰かが傷ついたのが怖いんだ・・・僕の、せいで・・・僕のせいで・・・‼︎

「・・・あ・・・あぁ・・・」

「はははははっ‼︎」

人間はブラックハートさんを蔑み見ながら、面白可笑しく笑う。僕はもうなにもかもが怖くて、一歩、一歩と後ろに逃げ進んだ。

けど、やはり僕は愚かだったんだ。
一歩一歩と後ろへ進む。でも次に足がついた所は、あのキラキラ輝いていた・・川だった。

「・・・あっ」

足のバランスがとれなくなり、僕は氷のように冷たい、水の中へドボンと落ちてしまった。

「・・・っ・・・‼︎くくっ、はーはっはっはっ‼︎ざまぁないぜ‼︎自分から死にに川へ落ちるとはなぁ‼︎あの川は激流だから、魔族といえど、助かるのは無理だろうよぉ‼︎はっはっは‼︎復讐は果たしたぜ?・・・・・・クロバ。・・・ククッ、くはははははっ・・・」













「っ、うっ・・・」
水はものすごい勢いでぶくぶくと泡を吐いている僕をどこかへ運んで行く。

僕は水に逆らおうとするけど、水は逆らう事を許してくれない。まるで人間みたいだ。・・・特にあの、今の茶色い髪の・・・。


「っ・・・」


僕は必死に、上へ、上へと手を伸ばす。けれど、激しい水の流れる音がするだけで、何も起きない。

・・・あ、


今気付いた。


今更。


・・・僕はなんて馬鹿なんだろう。


手を伸ばしているってことは、僕は助かりたいと思っているということ。さっきもそう。僕は『怖い』っていう感情を持っていた。

僕には感情があったんだ。少しはあったんだ。空っぽの僕にも。


でも、感情があるとわかったからこそわかる。手を伸ばしたって無意味なんだって。


僕には・・・・・・誰もいない。僕を愛してくれる人なんて・・・1人もいやしない。


どんなに手を伸ばしたって、助けてくれる人なんて、誰もいないんだ。


・・・あはは、本当馬鹿だな、僕。

・・・それに、助かったって結局処刑されて死ぬかもしれないのに。苦しい思いをするだけなのに。それでも助かりたいと、生きたいと思うの?

・・・わからない。自分のとっている行動が。


「・・・っ!」

・・・ああ、駄目だ。もう、息が出来ない。・・・このまま僕は死ぬのかな・・・だろうね。
人間は僕を処刑すると言っていた。なら、お望み通りに僕は死ぬよ。

目を瞑る前に・・・最期に伸ばした手を見る。それは水のせいでぼんやりとしていたが、ちゃんと見えた。塞がっていたはずの傷がまた開いていた。そこからは、赤色の液体がこぼれていた。





ー続く。

中編終わりました!( ´ ▽ ` )

次回は恐らくラストです((

今回はブラックハートってのがでてきましたが、こいつも実は成り茶の方で成ったことあるんですよね。最近は全く成ってないけども((
一体誰なのかは番外編で‼︎((
名無し「…番外編だすんだ。」
ロン「よくネタが尽きないね」
ブ「ガル…」
マイ「君たち黙ろうか」

そうそう、前編のコメントであったように、このお話の主人公はリトです( ´ ▽ ` )!わかる人にはわかると思ってたです((
いやぁ、コメント見て、リトリト愛されてるなぁ、と感動しました。自分のキャラを大好きって言ってくれるのってめっちゃ嬉しいですよね( ´ ▽ ` )涙でたわ((
よかったね、リトリト‼︎
リト「……どうでもいいし」((


あ、さらに言うと、今回でてきた人間さん、一応名前あるんです。アザメといいます。クズ野郎です((
アザ「俺の扱いひでぇ((((;゚Д゚)))))))」

ではでは、最後まで見てくださってありがとうございましたー( ´ ▽ ` )ノ