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不定期更新しますですー

すべては無から始まった 後編

目を覚ますと、茶色い天井と白い明かりがあった。

僕は暖かい布団の中にいたが、体は少し濡れていて、ちょっと寒かった。

頭がボーッとする。状況が理解できない。どうして僕はこんなところにいるんだろう。

・・・あれ?そもそも、僕は誰?


頭の中を整理する。なんということだろう。起きる前までのことが全く思い出せない。

僕は誰で、どうしてここにいるの?


ギギギギギギ・・・

どこかから扉の開いた音がする。扉からは、僕と同じくらい背丈の男の子と、僕よりすごく大きい男の人がでてきた。

「おーっ‼︎起きたか!よう‼︎」

朱色の髪色で1つ縛りの、僕と同じ背丈くらい男の子は、僕と目を合わせると、走ってこっちへ向かってきた。

「ひっ!」

何故かはわからないが、走ってきた子に恐怖を感じた。そして布団の中にうずくまってしまった。

「あれ、なんでまるまってんだ?もう昼だぞー!おーい‼︎」

「うわぁ⁉︎」

男の子は、布団をひっくり返そうとした。僕はそれを必死に抵抗した。

「おい…怖がってるだろ。」

布団に隠れたから見えなかったけど、男の人は、男の子を制止してくれた。

「うぇーっ!なんだよー、ビビリだなあ、お前ー!」

「ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい!」

僕は男の子に必死に謝った。怒らせると殴られたり蹴られたりすると思ったから・・・あれ、どうしてそう思ったんだろう・・・。怖かったからかな。

「・・・なあ、君、とりあえず、落ち着いて話を聞いてくれないか?布団からでてこなくてもいいから。」

「・・・わかり、ました。」

もしかしたら、話を聞くことで自分の事が何かわかるかもしれない。

「君は、ついさっき、川の近くで倒れていたんだ。」

・・・あ、なるほど。だから少し濡れていて寒いんだ。

「で、それを俺と、このうるさい子供、ルトがここまで運んだというわけだ。・・・ちなみにここはルトの家だ。」

「イェーイ‼︎ルトってのは俺なー‼︎」

・・・さっき走ってきた子か・・・

「ちなみに、俺は・・・・・・ジェルイア。こいつの」

「俺のアニキ‼︎」

「誤解を生むからやめろ!兄弟じゃないから!」

「へへへっ!ま、いいじゃねーか!どっちでも‼︎」

「よくない‼︎」

ルトさんとジェルイアさん・・・か。

「なあなあ!お前は!お前はなんていうんだ⁉︎」

⁉︎・・・い、いきなり話しかけてきた。えーっと、えーっと!

「わからない、です。自分の名前。」

「えーーーー⁉︎」

「・・・ていうか、思い出せないです。自分の名前以外にも、自分が今まで何をしてたのか。」

「えーーーーーーーー⁉︎」

そ、そりゃ驚くよね、向こうはちゃんと名前あるし・・・・・・。

「!・・・記憶喪失か・・・。」

「んー?ジェルイアー、記憶喪失ってなんだ?」

「記憶喪失というのは記憶がなくなってしまう状態のこと。・・・じゃあ、君は、たった今起きた時以降の出来事は、何も思い出せないんだな?」

「・・・はい」

僕は記憶喪失・・・なのか。

「・・・参ったな・・・これじゃあ家に届けようにも・・・場所が・・・」

どうしよう、僕のせいでジェルイアさんを困らせてしまっているのかな。だとしたら謝らないと、斬られたり殴られたり・・・!いやだ、怖い怖い怖い!

「ご、ごめんなさい、ごめんなさいごめんなさい!」

「な、なんで謝るんだ?」

「だって、僕のせいで・・・困らせて・・・」

「あ、ああ、確かに少し困ってるが、君のせいじゃないぞ。安心しろ。」

ほ、本当かなぁ、無理して嘘言ってないといいけれど・・・

「それにしても、どうしようか。君、何も思い出せないって事は、自分の家もわからないんだろう?」

「・・・は、はい」

自分の家どころか、自分に関しての事が何もかもわからないんだけれども。

「えー!家わかんねーの⁉︎迷子かお前ー!」

ま、迷子・・・そう言われると何か複雑な気分だ・・・

「・・・お前は少し黙れ」

「えーー!」

「・・・あ、そうだ。記憶を取り戻すまで、ここに泊めてもらったらどうだ?」

⁉︎…ジェルイアさんは何を言い出すのだろうか。こんな見ず知らずの僕を…泊める?…迷惑じゃないかな。

「え、いいんですかっ?あ、でもいえ、迷惑だしっ、えっと、えっと・・・」

「小さい子供が、迷惑とか気にするな。それにルト、お前の親父さんなら、快く引き受けてくれるだろ?」

「・・・?こころよくひきうける?どういう意味だ?」

「・・・はぁ・・・俺の時みたいに優しくしてくれるってことだ」

「・・・あー‼︎なるほどな!大丈夫だぜ‼︎親父は優しいからな!お前にも優しくしてくれるって‼︎」

・・・2人が話している内容は、よく理解できなかったけど、とりあえず僕を泊めてくれるみたいだ。

・・・どう、しよう?優しくしてくれるのは嬉しい、けれど。やっぱり迷惑とかそういうのを考えると・・・でも、行く宛はないし・・・

「おーい、ルトー、ジェルイア君ー、おつかい頼むー」

「えー‼︎わかったぜー!今行く!親父ー!メモくれー!」

ルトさんは、ドタドタと部屋を飛び出して行った。

「・・・!・・・そうだ。なあ、君、こういうのはどうだ?」

「・・・え?」

「君はここに泊めてもらう代わりに、ここで家事を手伝う。これなら、手伝ってくれる方も喜ぶし、君にも居場所が出来る。悪い話じゃ、ないと思うぞ」

・・・!て、手伝うだけで、喜んでくれる・・・?

「そ、それでいいんですか!?」

「あ、ああ、多分。・・・まぁ、家事なんてしなくとも泊めてくれるだろうけど、あの人なら。」

・・・手伝いなんて・・・まともに出来るかわからないし、迷惑は、かけたくない、けど、僕には今、帰る場所がない。うう、仕方ない、言葉に甘えよう・・・。

「・・・・・・そ、そのそのっ、お願いします・・・ですっ」

「ははっ、それは俺じゃなくて、親父さんに言わないと。おーい、親父さーん、話が・・・」

ジェルイアさんも、部屋から出て行き、さっきルトさんを呼んでいた男の人と会話をしていた。(声しか聞いてないけど)
親父さんという人は、『構わないよ、むしろ家族が増えて楽しくなりそうだ』と言っていた。僕はその言葉を聞いて、寒かった体が、あったかくなった気がした。






記憶を取り戻すまで親父さんに泊めてもらうことになった。
僕は、親父さんやルトさん、ジェルイアさんの手伝いをしながら、一刻も早く記憶を取り戻さなきゃならない。で、さっそく、僕はルトさんのお手伝い・・・おつかいをしている。ルトさんとジェルイアさんも一緒に来てくれることになった。

「買うブツはー、抹茶ドーナツ、アイスまんじゅうようかんーって、和菓子ばっかだー!俺の好物ばっかじゃねぇか‼︎さすが親父‼︎わかってる‼︎」

ルトさんは、街中でハイテンションでジャンプしていた。

「おい、目立つから大人しくしろ。恥ずかしい…」

「嫌だー!わー!わー!」

「…はぁ。ごめんな?うるさくて…」

ジェルイアさんは、呆れたような表情で、手を頭につけながら溜息をついていた。

「い、いえ。大丈夫です。」

さっきは布団にくるまっててよく見えなかったけど、ジェルイアさんは緑髪の人で、やはり僕よりすごく大きかった。でもジェルイアさんは右腕に不自然にマントをかけていた。まるで右腕を隠してる・・・みたいに。何でそんなことしてるのか聞きたかったけど、いきなり聞くのは失礼だからやめよう。

「・・・そうだ、お前・・・っと、そうか、名前がまだわからないんだったな。」

「・・・は、はい」

・・・・・・名前は、未だに思い出せない・・・けれど、そもそも名前なんてなかったような気がする。・・・多分。

「じゃあじゃあ、記憶ってのを取り戻すまでの名前を、俺が考えてやるー‼︎」

「ええっ?」

ルトさんが?…不安なのは、僕だけ、かな?

「うーん、うーん、うーん、あ!じゃあロードはどうだ⁉︎親父から聞いたぜ!ロードは道って意味だってな!」

「・・・なんで道なんだ?」

「だってー、こいつ、迷子なんだろ?なら、ちゃんと思い出して帰れるように、道って意味のロードだ!どうだ⁉︎」

「え?えっと・・・」

思い出して・・・ちゃんと帰れるように・・・か。・・・帰る・・・帰る・・・。

「い、いいと、思いま」

「あ、いや、待てよ!ただ単にロードじゃなんかつまんねぇな‼︎よし、じゃあロトで‼︎」

「え⁉︎ロト・・・?どうして?」

別に、ロードでもいいと思うけれど・・・。

「へっへへ!俺の名前はルト、お前はロト・・・兄弟みたいでいいじゃねーか‼︎」

「ルトにしては中々な案をだすなー。」

「にしてはってどういう意味だー‼︎」

ジェルイアさんは笑いながらルトさんに賛同した。

「むー、じゃあじゃあ、今日からお前はロトだ!いいよな!よろしくな!

・・・ちょっと強引に名前を決められたけど・・・兄弟・・・ロト・・・いいかもしれないな。

「は、はいっ!」

ロト・・・今日から僕はロト、か・・・えへへ、なんか嬉しいな。ちゃんと名前があるって。もしかしたら、案外これが本名だったり・・・なんて、そんなわけないよね。あはは・・・

「・・・あ!ばあちゃんの店着いた‼︎おーい!ばあちゃん‼︎」

「おお・・・ルト君・・・よく来たねぇ」

ルトさんが駆け寄った屋台には、なにかの生地をこねてるお婆さんがいた。

「ばあちゃん‼︎アイスまんじゅうと抹茶ドーナツ‼︎」

「はいよ・・・」

「おい、ようかんも」

「あ、それもそれも!」

「はいよ・・・おや、今日は知らない子もいるねぇ・・・」

「え、えっと」

知らない子・・・僕の事だろうな。

「実は、この子、さっき川の近くで倒れていた子なんですが、・・・記憶喪失で・・・行く宛がなくて、ルトの家に居候させることになって・・・」

「おやおや、そうなのかい、大変だねぇ・・・。おお、そうだ、君」

「はっ、はいっ‼︎」

お婆さんはこちらに目線を向けると、もちもちとした冷たいものを僕に差し出した。

「こ、これはなんでしょうか?」

「知らないのかい?これはアイスまんじゅうといってねぇ・・・美味しいんだよぉ、食べてみんさい」

「・・・」

だ、大丈夫かな・・・毒やなにかが入ってないかな・・・?普通、タダで商品を渡すなどのウマイ話には裏があるって・・・・・・あれ?なんでまた・・・

・・・まあ、いいや。食べてみよう・・・

・・・・・・‼︎

もちもちとした生地の中にシャリシャリとしたよくわからない甘いものが入っていて、味も食感もたまらなく美味しかった。そして、冷たいはずなのに、暖かかった。このアイスまんじゅうは。

「美味しいですっ‼︎感動です‼︎」

・・・あ、気がついたら感動で涙がでてしまっていた。

「おお・・・泣くほどかい、そうかい、そうかい、よかったよかった」

「・・・なんか、食ってるのみたら俺も食べたくなってきたぜー」

「じゃあルト君にもあげよう。抹茶ドーナツじゃよ・・・ジェルイア君にも・・・ようかんを」

「わーい‼︎ありがと、ばあちゃん‼︎」

「よ、ようかん・・・なんでようかん・・・?まぁいいや、ありがとうございます。」

「・・・」

ルトさんやジェルイアさんも、抹茶ドーナツとようかんを、ニコニコとした笑顔で食べていた。その笑顔を見ながら僕もまた食べ始める。すると、アイスまんじゅうが更に美味しく感じた。不思議だ。

「んー!やっぱりみんなで食うと美味いな!ジェルイア、ロト!」

「・・・そう、だな」

・・・みんなで食べると、美味しい?なんで?・・・ちょっと聞いてみよう。

「みんなで食べると、食べ物は美味しくなるんですか?僕、よくわからないです」

ルトさんは、僕の質問にきょとんとしていた。・・・難しい内容だったのかなぁ。・・・でも、ジェルイアさんは、静かに笑いながら言った。

「お前は人の笑顔を見てどんな気持ちになる?」

「・・・人の、笑顔?」

・・・人の、笑顔・・・

先ほどのルトさんとジェルイアさんの笑顔を思い出す。・・・あの幸せそうに食べてる笑顔は・・・あの笑顔は・・・見てると幸せな気持ちになった。

「幸せな気持ちに・・・なりました」

「・・・だろ?幸せな気分で食べると、それがもっと美味しくなるんだぜ。・・・まあ、これは俺も最近知ったことだがな・・・」

「・・・!」

幸せな気分で食べると、もっと美味しくなる・・・!なる、ほど!だからアイスまんじゅうは美味しくなったんだ!

「なるほどです!ジェルイアさん、ありがとうございます!」

「あはは、いいって」

ジェルイアさんは微笑みながらぼくの頭を撫でてくれた。僕は、それで更に幸せな気分になった。

「・・・兄弟みたいだな、お前ら!
・・・あ!そうだ!記憶取り戻すまでの間、お前ら兄弟になっちまえよ!」

「ええ⁉︎」

「・・・あのなぁ」

ルトさんはまた何を言い出すのだろうか僕なんて迷惑的存在でしかないのだからそんなの迷惑でしか

「だってだって!こいつも兄貴とかいたら心強いじゃねーか‼︎」

・・・た、確かに、兄弟と呼べる存在がいるのは心強いかもしれない。けれど、僕は・・・

「・・・わかったよ。」

えっ⁉︎ジェルイアさんまで何を⁉︎

「じゃあ、俺の事はジェルイア兄さんとでも呼ぶがいいさ。」

「ジェ、ジェルイアさん!?あ、あのあの、迷惑じゃないですか?

「ジェルイア兄さんだ。」

「あ、はい、ジェルイア兄さん」

無理矢理強引に呼ばされてしまった・・・

「わー‼︎じゃあ俺はロトの親友な!親友もいた方が心強いだろ、な?だからこれからはルトと呼べぇい、弟分よ‼︎」

「弟分⁉︎わ、わかりまし・・・」

…友達…親友…友達って親しい感じで接した方がいいんだろうか。お兄さんの場合も、そうだ。親しい感じで…親しく…親しく…よし、勇気を出して!

「わかったよ!ルト!ジェルイア兄さん!」

いきなり、馴れ馴れしく呼ぶのは、失礼かと思ったけれども、勇気をだして呼んでみた。今思えば、ああ、怒られるかなぁ、と思ったけれど、意外とそうでもなかった。2人は、笑顔で返事を返してくれた。その笑顔も、やっぱり僕を幸せにしてくれた。・・・あははっ、最初は、2人とも少し怖かったけれど、今は・・・

「・・・あっ!やべっ!忘れてた!ばあちゃん!金払うからもう一個それぞれ菓子くれー!」

「はいよ・・・」

「ていうか忘れてたのかよ」

「あははっ・・・」

ルトの忘れっぽさに、ちょっと呆れて笑ってしまった。






『・・・っははは』

「・・・えっ?」

どこかから、笑い声が聞こえた。近いけど、遠いような場所から。でもその場所はわからない。・・・その笑い声は、まるで何かに対して恨んでるような、怒っているような、そんな気がした。

「ん?どうした、ロト」

「え?う、ううん!なんでもないよ!兄さん!」

・・・気のせい、だよね?・・・多分。

ーーーーーーーーーーーーーーーー
気が付くと、僕は川の近くの、石だらけの地面に横たわっていた。

ここは・・・どこ?僕はさっき、溺れていたはず。なのにどうして助かっている?生きている?普通、あんな激流に流されたら、魔族といえど助かるはずが・・・ん?

川の向こう側に、深緑色の髪の少年が倒れていた。僕は状況を確認するためにあの少年の元に行くため、体を起こしたけど、その瞬間、体中に違和感を感じた。体が妙に軽い。自分の手や足を見る。だが、足はない。手も・・・ない。だけれど体を動かしている感じはする。

恐る恐る、水面に自分の姿を写してみる。そこには紫色の火の玉しか写っていなかった。これは・・・まさか、僕?僕は、幽霊にでもなってしまったの?・・・じゃ、じゃあ、やっぱり僕は死んでしまったのか。

・・・体を動かしてみる。すると、体がふわふわと宙に浮いた。・・・本当に、死んだんだね。僕。・・・ふわふわ浮きながら、あの少年のもとへ行く。深緑色の髪の少年には、ナイフで斬られたような傷がたくさんあった。この傷は、間違いない、僕自身が受けていた傷、そのものだ。

・・・じゃあ、コレ、は、僕の死体か。

・・・哀れだね。こんな無様な死に方をして・・・。

「・・・ははっ」

・・・結局、僕は、何も・・・得られない、まま・・・ああ、なんと哀れな事・・・で。

「・・・?」

・・・自分の死体をじっと見ていると、死体が少しだけ、ほんの1ミリ程度だけ動いた・・・気がした。


『おい!誰か倒れてるぞ!ジェルイア!助けないと!』

『!本当だ・・・』

・・・人間が、こちらに来た。そして僕の死体を見つけ、どこかへと運び出した。ま、まずい、死んでいるとはいえ、アレは魔族の体だ。人間は魔族を嫌っているから、何をされるか・・・。

・・・アレでも一応、僕の体だ。何かされると思うと、少し・・・怖い。とりあえず、人間を、追いかけよう。







人間は、どこかしらの家に入り、僕の死体を布団に寝かせ、その場を去った。

・・・死体なんか寝かせて、何になるっていう、のに。

「う、ううん・・・」

・・・⁉︎

僕の死体から、声が聞こえた。死体・・・だったものは、ゆっくりと起き上がり、あたりをキョロキョロと見回していた。

落ち着いていられなかった。どうして?死んだはずなのに、僕はここにいるのに、何故?何故動ける?
頭の中がその疑問でいっぱいだった。しかもソレは、僕の姿が見えていないようだった。

ギギギギギギ・・・

先ほどの人間2人が入ってきた。人間の1人は、死体だったものに走って駆け寄ってきた。ああ、そうか、暴力を振るうんだろうな。・・・と、思ったけど。人間は武器を持っておらず、その様子はない。というかむしろ、全く暴力を振るってこなかった。なんで?コレは今、人間の姿をしているけれど、目だけは絶対隠せな・・・え


・・・ソレの目の色をよく見ると、蒼く綺麗に輝いていて、澄んだ目をしていた。僕の汚い紅とは全く違く。

・・・なん、で?どう、して?魔族は絶対に目の色だけは隠せないはずなのに。こ、こいつは僕だったもの、魔族であることに間違いはない。腕や足の傷が全く一緒だから。なのに、どうして目が青いんだ・・・?わからない・・・。・・・わからない事が、多すぎるな、僕・・・。




・・・人間たちとソレは、家からでていき、どこかへと向かっていった。オツカイというものに行くらしい。・・・不安だから、やっぱりついていくことにした。

緑髪の大きい男や、朱色の髪の小さい男は、僕が何をしても僕の存在は気付いてくれないようだ。けれど、コレはちゃんと人間たちには見えているようで。

『・・・そうだ、お前・・・っと、そうか、名前がまだわからないんだったな。』

『・・・は、はい』

大きい人間とソレは、名前についての話をしていた。

・・・あはは、『わからない』んじゃない。最初っからないんだよ、存在しないんだよ‼︎僕の名前・・・なんて‼︎




『じゃあじゃあ、記憶ってのを取り戻すまでの名前を、俺が考えてやるー‼︎』

・・・え?名前・・・を?コレに?僕に・・・じゃ、なく?

『うーん、うーん、うーん、あ!じゃあロードはどうだ⁉︎親父から聞いたぜ!ロードは道って意味だってな!だってー、こいつ、迷子なんだろ?なら、ちゃんと思い出して帰れるように、道って意味のロードだ!どうだ⁉︎あ、いや、待てよ!ただ単にロードじゃなんかつまんねぇな‼︎よし、じゃあロトで‼︎』

『ロト』・・・それが、コレに与えられた、名前。僕じゃなく、コレに。

・・・ロト・・・ロード・・・ああ、ばっからしい。くだらない。思い出して帰れる?コレに帰れる場所なんて最初っからないんだ。そんな名前になんの意味があるというの?・・・くだらない・・・‼︎



ザザッ・・・

「・・・いたっ・・・なに?」

突然、頭に激痛が走った。そして僕の頭の中には、川に溺れてしまったあの時の映像が流れた。しかも、それは僕が目を瞑った後の記憶だ。

僕は手を伸ばしながらどこか、どこかへと流されていた。けど、突然、僕の身体は青色と赤色に光り出した。そして、僕の身体から、白と黒のハート型の石が飛び出た。そして、それは突然、綺麗に2つに割れ、白と黒の石・・・元々同じだったものは、それぞれ別のものになった。白の石は、僕の身体へと戻り、黒の石は、僕の身体とは別の所へ流されていた。

僕はそれらを見て、全て理解した。自分のことや、死体だったもについて。

「・・・なる、ほどね。」

あの石は・・・僕の心そのもの。白い石は・・・で黒い石が・・・なんだ。

・・・ああ、そうだとすると、僕は・・・・・・・・・・

僕には、持っているものが少ないのに、たくさん、奪われてしまった。・・・・・・に。



『お前は人の笑顔を見てどんな気持ちになる?』


大きい男は、ソレにこう問いた。

僕には質問されていないが、言わせてもらうよ。

「・・・憎いよ。人の、人間の笑顔なんて。笑顔だけじゃない。僕の目に写るもの全てが憎いよ。」

自分の事がわかってから、この『憎い』という気持ちは収まらなくなってしまった。・・・いや、もしかしたら、ずっと前から、何もかもが憎かったのかもしれない。・・・・・・が。ただ、・・・が・・・・・・おかげで、気付いてしまったのかもしれない。

・・・ああ、どうしよう。この気持ちに気づかなければ、よかったなぁ。『憎しみ』の感情は、僕の中で膨れ上がっていく。それは1秒、2秒経つごとに、どんどんと。でも、その感情は、僕の首を絞めるほどに、僕を苦しめる。

・・・よ、なんて言っても、誰も・・・て、くれないんだろうな。


『あははっ・・・』

ソレは、僕がしたことのない幸せそうな表情で、僕がだしたことのない幸せそうな声で笑っていた。それをみてると、すごく、すごく苦しくなってきた。

苦しい、苦しいよ。この苦しみはどうしたら収まるんだろう。






・・・あ、そう、か。・・・・・・・・・ば、いいんだよ。簡単な話、じゃないか。あははははははは!

・・・初めて、僕はこんなに笑ったけれど、それは、あんなに幸せそうなのとは、真逆の・・・真っ黒な笑い声だったと思う。

「・・・っははは‼︎‼︎」

ーーーーーーーーーーーーーーーー
「ちょっと!聞いてるの!?ねぇ!」

「うるさいなぁ、何の用?今、ちょっと策を練ってて忙しいのだけども」

「忙しいもなにもないわ‼︎あの魔族の子供、どういうことよ」

「・・・あれ、意外。宝石とスイーツにしか興味がないキミが、魔族を気に掛けるとはねぇ」

「うるっさいわね!気分よ気分」

「・・・まあ、ヴァルクロイアがあの魔族の子と関わってるから、気になるってだけだろうけど。・・・で?何が知りたいの?」

「ヴァルクロイアは関係ないわよ‼︎気になった事はオチを知らないと気が済まないだけよ‼︎・・・で、あたしが聞きたいのは、あの子供に見せたんでしょ?溺れてた時の記憶を。」

「・・・あー、うん、で?それがなにかー?」

「なにかー?じゃないわよ‼︎あの魔族の子供、ただの魔族じゃないんでしょ?魔族の血液は紫色だし、目も本来は赤なはずでしょ?なのに・・・今のあの子供の血液は赤色、そして目は青。おかしくない?」

「ああ、それか。えーとね・・・」

「・・・ゴクリ」

「・・・確かに、彼はただの魔族じゃない。彼は今の魔族の環境からして、あり得ない存在・・・そして世界でたった1人しかいないものなんだ。・・・はい、これが答え。」

「・・・は?・・・ちょっと‼︎回りくどい言い回ししないではっきりと言いなさいよヤンデレ兄貴‼︎意味不明なんだけど‼︎」

「えー?たまには頭を捻らないと、馬鹿になっちゃうよ?あ、元から馬鹿だったね!いやぁ、ごめん、ごめん‼︎」

「っ・・・こいつ・・・ぶちのめしてやるわぁ‼︎」

「やめてくださいトゥルク!キクも、妹を挑発するのはいい加減やめてください‼︎」

「はーい。ハラル、ごめんねー」

「ったく・・・ん?ヤンデレ兄貴、そのでっかい本はなんなの?さっきからその本に何か書いてるけど」

「・・・言ったでしょ?策を練っているって。」

「・・・策とは?」

「・・・そうだねー、じゃあちょっとだけ教えるよ。勇者君をどうやって勇者にするか、の策」

「・・・まぁた、意味わからんことをほざいた、このヤンデレ兄貴」

「あはは、悪いね、今は全てを教えるわけにはいかないんだ。それに、今教えたことはほんの1部分…あっ!おっと、なんでもないんだ。気にしないでよ」

「気にするわ‼︎」

「わ、私も気になります。ていうか、キク、わざと気にするような言い方してますよね」

「・・・あーあ、わかっちゃう?・・・ま、でも。今はまだ教えないー。でもそうだね、勇者君を勇者にできたら教えるよ!」





「勇者君ってなんなのよ‼︎・・・ったく‼︎」

「・・・また変なことを企んでいないといいのですがね」


ー終わり。

意味不明な回でごめんなさい((

リトサイドの最後の部分は、リトの声は誰にも届かないってのをイメージして、とぎれとぎれになっておりますです((

表現が意味不明すぎてよくお話がわからなかったらごめんなさい(´・_・`)

あ、初めて小説を終わらせることができましたー( ´ ▽ ` )ノやったね私‼︎((
でも、一応終わったのですが、番外編、だそうと思います。番外編はロンジェとかイrのお話とか、ロトの話も詳しくやろうと思ってます。

ていうかコレ、リトとロトのお話なのに、後編にしか、しかも半分しか出番がないロトって・・・
ロト「うわぁぁぁぁぁぁ。・゜・(ノД`)・゜・。‼︎‼︎」
リト「・・・ハッw」

ではでは!最後までみてくださってありがとうございました!