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マイ ネーム イズ マイ

不定期更新しますですー

赤VS紅 10

真っ白い空間。ここには白というもの以外なにもなく、それ以上のものもそれ以下のものもない。ここには白色しかない。真っ白い空間。

 
そこにぽつん、と、紫色をした不思議なネズミがいた。
 
「あなたは、誰…?」
 
私はネズミに問いかける。ネズミ…さんは、私の声に気がつくと、こっちを振り向いてこう言った。
 
「夕焼け空を見上げて。そこにヒントがある。」
 
夕焼け空?ヒント?いったいなんのこと?
 
「だけどそれは、間違いに進むためのヒントかもしれないね。せいぜい、気をつけることだよ。」
 
ネズミさんは淡々と喋り続けている。間違いに進むヒント?…なんのこと?…なにがなんだかわからない状態の私を、ネズミさんは哀れなものを見る目で見ていた。その蒼い目は、濁った海のように淀んでいた。
 
私は、この目を知っているような気がした。けど、どこか違和感を感じた。知っているようで、知らない…曖昧な感じだ。
 
「…またね?」
 
ネズミさんはそっぽを向いて、どこかへ消えてしまった。その瞬間、白い世界は黒い世界へと変わり、私の意識はここで途切れた。そして、微かに声が聞こえた。
 
「これでいいのか?面白そうだから協力してやってるけど、期待通りになること、信じてるぜ?ウケケケ」
 
…だれ?あのネズミさんとは、確かに違う声。この声は本当に知らない。聞いたこともない、男の子の声。
 
「……!」
 
…また声だ。今度はしっかりと聞き覚えがある。この声は、最近聞いたものだ。でも、どこで…
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
「スフレ‼︎‼︎」
 
「はっ」
 
…あれ、スフレ、なにをしてたんでしょう?クレナ君の治療を待っている最中、だったはずですが…
 
「ねぇ、大丈夫?あんた、ボーッとしてたけど」
 
「あ、い、いえ!大丈夫です!すいません、ファイちゃん…」
 
ファイちゃんは心配そうな目でスフレを見ている。なんだか申し訳ないです。
 
「べつに私はなんともないけど…なんかあったの?」
 
なにかあった、といえば嘘にもなるし、嘘にもならない。さっきまで、誰かと会話していたような気がするけれど、どんな話をしていたか、どんな姿だったか、鮮明に思い出せないのです。スフレに関するなにかを言われたような気がするのですが…うう、思い出せない、スッキリしないです…。
 
「無理しないでよね、フラウィアまでああなんだから」
 
「…す、すいません。」
 
あの火事の光景を見たあと、フラウィアちゃんは、宿屋の個室にひとり篭りきってしまいました。ノックして声をかけても、返事はいっさいなくて、今はひとりにしてあげています。早く元気になるといいのですが。
 
一方、あの火事現場にいたクレナ君は不機嫌そうな顔をしてこちらを睨んできています。怖いです。「余計なお節介を…」といった感じのオーラを放っています。
 
「…礼は言わない」
 
クレナ君はアウォー君が必死に手当てしました。しかし、クレナ君はこの通り態度が冷たく、アウォー君に一言も感謝の言葉をあげませんでした。
 
「なーによあんた、感じわるーい」
 
「うるさい、余計なお節介をかけたのはそっちだ」
 
ファイちゃんの言葉に反応したものの、やっぱり言葉が冷たいです。
 
「…幸い、火傷はなかったが、そこらじゅうに傷がたくさんあった。」
 
「…… そうかよ。」
 
クレナ君の手首や足首には包帯がたくさんまかれています。火傷はしてないみたいですが、いったいなにが…
 
「…」
 
クレナ君は席を立つと、どこかへ行こうとしました。何処へいくんです?と声をかけると
 
 
「…ここにいる意味はない。だから早く、早くどこかへ逃げないと」
 
「逃げ…?」
 
クレナ君は首に巻いている黒いチョーカーをぐっと握りしめると、勢いよく飛び出していきました。
 
「待ちなさいっ‼︎」
 
「うがっ」
 
ズテンッ、という音が響いた。またまたクレナ君が転んでしまいました。
 
「…てめぇ…」
 
「逃がさないわよっ!あんたを監視しなさいって、グランさんから頼まれてんだから!」
 
ファイちゃんは、うまくクレナ君の足をひっかけていました。い、痛そうです…
 
「…チッ、目障りなガキだな…」
 
「はあ?あんた口悪いわねっ‼︎」
 
「け、喧嘩しないでください!」
 
ファイちゃんはよく男の子と喧嘩するなぁ…としみじみ思いました。レマ君…大丈夫でしょうか…。
 
 
 
 
 
 
 
「…で、クレナだっけ?あんた、なんであんな場所にいたのよ。」
 
「…たまたまいただけだ。…ぐっすり寝てたらいつの間にか火事が起きて。」
 
ファイちゃんの問いにクレナ君は目を逸らさず答える。嘘ではなさそうです。と、いってもスフレ、優柔不断なので嘘か本当か見分けるの、得意じゃないですが…。
 
「これで満足か?」
 
「んなわけないでしょ‼︎まだまだ怪しいんだから!」
 
「…はぁ、めんどくさい」
 
ファイちゃんもクレナ君も、お互い雰囲気がピリピリしています。見えない真っ赤な炎がゴォォォ、と燃え盛っています……
 
「赤vs紅…か。」
 
「え?」
 
「いや、髪の色が…」
 
あ、そういえば、ファイちゃんの髪の色は赤、クレナ君の髪の色は紅色ですね、だからなんだ、という話なんですけど。
 
「…すまない、うまいこと言ったつもりはない」
 
「ふぇぇ⁉︎あ、ああ、すいませっ」
 
アウォー君は少し顔をうつむかせてしまいました。また心読まれたっ‼︎うぅぅ…
 
「とーにかく、なにかわかるまで逃がさないんだから‼︎わかったわね‼︎言っとくけどあんた怪我してんだから転ばすくらい簡単よ!」
 
「…はいはい」
 
ため息をつきながら、クレナ君はめんどくさそうに机に突っ伏し、寝息をたてながら寝始めました。
 
「く…寝てごまかしたわねっ」
 
「ファイちゃんおちついて…」
 
「っ……。」
 
「…あの火事から、みな元気がなかったり、不機嫌だったり、大変だな。…生憎だが俺はカウンセラーではないので、元気付けるなんて到底できないがな」
 
アウォー君は灰色の紙を読みながら、残念そうに言います。なにを読んでいるのか気になったので、読んでいるものをちらっと読んだ。
 
「…新聞だ。今回の火事が取り上げられていたから。」
 
「あー、もう載ってんの?早いわねー。」
 
灰色の紙には、グレーの炎の写真と頭がいたくなるような文字の羅列がビシッと並んでいました。
 
火事の犯人は未だ見つからず。だけど容疑者は…あのクレナ君です。偉い人たち…この事件を担当している騎士団さんたちからは、クレナ君を監視するよう頼まれています。子供とはいえ、スフレたちもあの場所にいたのに、何故スフレたちを疑わなかったのか疑問ですけど…
 
「……お。」
 
アウォー君は、火事の一件をみおえると、違う記事に目を向けました。なになに…《詐欺にご注意!フラテイシャンヌ*イエルズ》
 
「フラテイシャンヌ*イエルズ、最近有名になった詐欺師だそうだ。変装が得意で、名前も容姿も不明、いわゆる正体不明の厄介な輩だ。何年も捕まっていないらしい」
 
「はあ…なるほど。」
 
…フラテイシャンヌ*イエルズ…どこかで聞いたような…特に、この最後の…イエルズって…ああ、駄目です、思い出せない…。最近は記憶が戻りそうなのに…
 
「まあ、詐欺師など、自滅して失敗するものだ。何年もと書かれているが、どうせいつか自滅して失敗するに決まっている」
 
…どうせいつか…自滅、失敗?………いや。スフレは、私は、失敗などしない。するはずがない。あの御方のために、スフレは、私は…‼︎いっこくも早く‼︎ 早く…‼︎
 
 
 
 
 
 
 
グッ、と拳を握り締める。そして音を制し、静かに振り上げ、まずは水色髪の男の子に拳を下ろした。だけど、いともたやすく避けられてしまった。タイミングを誤ってしまったか。我ながら情けない。
 
 
「…どうした。いきなり殴ろうとしてきて…」
 
「あっぶないわねー‼︎」
 
‼︎……あ、あれ?スフレいったいなにを?…う、手が痛い…。あれ、机に拳がたたきつけられている。いったいなんで?どうして。今日はわからないことだらけだ。…はっ!アウォー君!
 
「ご、ごめんなさい!え⁉︎あ、スフレ、なにかしてました⁉︎」
 
アウォー君はスフレをじっと睨む。だけど一言も声を出さない。
 
「……………」
 
アウォー君は普段より長い沈黙をたてた後、目を瞑り、なにもなかったかのように、新聞を再び読み始めました。
 
「…早く事件が収まるといいな。そうしなければ、俺たちはここから動けないのだから」
 
「え、えと…」
 
なにもなかったかのようにスフレと話しているその時のアウォー君の、スフレを見る目が、声が、心が痛くて、苦しくて。ですが、スフレも、なかったことにしました。…気まずいですもの。こんな雰囲気じゃ。
 
「そ、そうですね‼︎…ん?下の方にもなにか書かれてます…『指名手配犯  暗殺者  カルテット  懸賞金4億』…4億っ⁉︎4億ってとんでもない数じゃないですか⁉︎」
 
「…4億…莫大な金の量だな。暗殺者カルテット…これは初めて聞く名前だな。ここまで懸けるほど、国が手に負えない罪人ということか…」
 
「4億⁉︎あばばば、やばっ‼︎欲しい‼︎捕まえられるかな⁉︎
 
「おい、やめておけ、死ぬかもしれないぞ」
 
「そ、そうねー…」
 
「あ、暗殺者って人殺し…なんですよね?ひぃぃ、怖いです…」
 
「…まあ、暗殺者なんて、簡単に会うものじゃないし、気にしなくても大丈夫だろう。」
 
「で、ですよね‼︎大丈夫ですよねっ‼︎」
 
 
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「あいつは見つかったか⁉︎」
 
「いいえ、残念ながらまだ。」
 
「っ…‼︎はやくして!でないとこの世界が……」
 
寂れ、荒れた地で、嘆き声と怒声が響き渡る。うるさい、少し黙っていてほしい。うるさいのは大嫌いだから。 
 
「わかっていますよ、あの子を……しないと、いけないんですよね。」
 
「そうだ、この荒れた世界を癒すためにハヤク、ハヤク、ハヤク‼︎」
 
…自分はなにもしないくせに、よくぎゃーぎゃーと喋るものだ。呆れた。まあ、人間なんてだいたいそんなものだ。人間の悪い部分をいちいちあげていたらきりがない。さて、さっさと終わらせて寝よう。そうしよう。
 
 
…私は今、ある依頼を受けている。とある男をこの町の人たちに差し出す事。とある男とは、詳しい事情は聞かされていないがこの世界のために必要な存在らしい。まあ、こんな醜い世界、どうなろうと、私の知ったことではないけれど、お金とご褒美は欲しいから頑張らないといけない。
 
 
とある男とは、寝癖頭の紅色の髪の人物。紅色の髪の男なんてそこらへんにいそうだが、首につけている黒いチョーカーが目印だそうだ。そのチョーカーの写真もしっかりと貰ったので、ちゃんと見つけられるだろう。まあ、もし間違って……ちゃったとしても、私の知ったことじゃない。人間なんて蚊みたいにうじゃうじゃといるんだから、問題ないでしょう。あ、蚊に失礼か。すいません、蚊さん。
 
 
…さあ、いこう、時間がない。あの子が起きてしまう前に、片付けよう。あの御方のために。