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不定期更新しますですー

ダンガンロンパR Despair city  ≪序章ー人物紹介編≫

ク「今回は人物紹介編で、いっきに人がでてくるからすごい長い。以上」
紅「クレナ君説明みじかっ☆」
ク「注意事項は前回の通りだ。察しろ。今回もそんなにグロテスクな表現はないから安心しな」
紅「ご安心をっ☆」
ク「(…こいつと話してること色々とつっこまれそうだな)」
紅「わかる人にはわかるってやつね☆」
ク「…はあ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…はい?」

エレベーターの扉が開いた瞬間、第一声がそれだった。

 

 

 

「oh!わんだほー!!すごいNE!!ビューティフォー!!」

屋上には、エレベーターにあったクマが、ギターを弾いてる絵が描かれた大きなステージや、派手やかなライトが設置されていた。私が起きたときには、なにもなかったはず…だよね?

「なにかのイベントでもやるのかしらね?」

「そ、そうなの…かな?」

確かに集まれって言われたんだからなにかしらあるんだろうけど…。…あ。

あたりを見ると、私と八夂ちゃんと音々ちゃんを除いて、13人の学生であろう人たちが屋上にいた。この人たちが入学生…私たちと同じ同級生、なのだろうか。

「キキーッ!!女3人組がきたぜ!!」

「これで、16人…人数はこれで丁度いいのでござろうか?」

「毎年16人だし、これで足りてるはずよ。」

私たち以外の13人の超高校級の人たちは、がやがやと私たちを見ながら話している。うう、なんかヒソヒソ話をされている気分で不快だなぁ…。

「ニュークラスメイトのみんな、初めましてっ!!!ミーは」

音々ちゃんは私たちにした様に、元気な声で踊りながら自己紹介し始めた。…ジャンプして、あのステージに上がって。…音々ちゃんには羞恥心とかないのかな…失礼だけど。でも、臆病な私からしたら、ちょっと羨ましいかも。私は体育館のステージに上がることすらためらいがあるもの。

「…今私、樹力ちゃんと同じこと考えてるかも。」

「…あ、やっぱり?八夂ちゃんも?」

「…うん。とりあえず、自己紹介して回ろうよ。ここにいるみんなはもうお互いのことを知ってるみたいだし。」

「…そうだね。」

 

「…はあ、うるさい」

さっそく、ステージの前に、だるそうに座ってよりかかっている水色の髪色の青年がいる。気難しそうな人だけど、頑張って話しかけてみよう!

「あ、あのお…」

「…なんだよ、目障りだから早くどっかいけよ」

「わわっ、ごめんなさい!」

彼と目を合わせようと足をかがむと、うっとおしそうに返事された。彼の眼は左目が前髪で隠れていて見えず、右目の朱い目しか見えない。その目は鋭く細くて、睨まれただけで石になってしまいそうだ。

「……」

彼は、お前と話すことはない、とでも言いたげに目を瞑った。多分、寝ちゃったのかな…?

「や、八夂ちゃんんんん…」

「あらら、いきなりハードル高い人に話しかけるなんて、やるねえ、樹力ちゃん。」

や、やっぱり見た目どおり気難しい人なんだ…。うう、一番近くにいたっていう理由で話しかけたのが仇になったか…。

「うーん、この人、名前だけは知ってるんだ。ズィヅ・アードニオン。超高校級の政治家。希望ヶ峰学園で政治に関する勉学を学ぶためにディ・リットっていう国から日本へ留学してきたらしいね。」

「じゃあ、外国人ってこと?」

「そうだね、まあ、名前からして外国人だし。」

音々ちゃんとは違って、本当に外国人なんだ。ディ・リットかあ…聞いたことない国だなあ。知名度がそんなにない国なんだろうか。

「噂によるとね、9歳ぐらいのころから政治界に入ったんだって。」

「きゅ、9歳!?小学3年生の年齢じゃない!?」

「んーと、ディ・リットでは、『功績が全て』を信条としている国だから、未成年がどうとか、子供がどうとか、関係ないんじゃないかな?」

「功績が全て…たった5文字の言葉なのになんだか短いのに重苦しい言葉だね…って、八夂ちゃん、やけに詳しいね」

「ん?詳しいもなにも、ネットに載ってたもの。みる?」

そう言うと、八夂ちゃんはキーホルダーがジャラジャラとかかっているスマホを取り出し、画面を見せる。そこには見慣れないインターネット画面と、先ほど八夂ちゃんが言っていた情報がそのまんま書かれていた。

「本当だ…」

「私、ネットとかよく使うからさ、こういう情報には詳しいんだよね」

「ふーん…そうなんだ」

私とは正反対だ…私はネットとか全く使わないから、あまり詳しくないし。…やっぱり似たような境遇でも違うところはあるんだな。まあ、人間、誰しも同じで違うとこはあるよね…。

 

 


「よう!!女ども!!キキキッ!!」

先ほど、女3人組、と叫んでいた、おでこにカットバンが目立つ、薄茶髪の少年だ。服装は緑色の短パンで白いノースリーブに可愛い猿の絵が描かれている。その下にMONKIとローマ字で装飾されている。見た目は…言っては失礼だけど、小学3、4年生並みの伸長だ。

「なんだよおめーら!!見下ろしやがって!!」

「ご、ごめんなさい…」

しょうがないじゃない…目線を合わせるには下向いてないと合わせられないんだから…

「これでもお前らと同学年なんだからな!!間違えんなよ!!」

「はいはい、わかってるよ。で、あなたの名前は?」

八夂ちゃんはまたため息をつきながら聞く。小学生みたいな少年はえっへん、と威張ってあごをあげて自己紹介をした。

「俺の名前は飛丸 門起、とびまる もんきだ!!超高校級の登り屋だ!!」

門起…MONKI、ああ、なるほど。MONKIってこの子の名前か!

この子も超高校級…いや、ここにいるからそうなんだってことはわかってるけど、外見からじゃそうは見えないなぁ…いや、人を見た目で判断するなって偉い人が言ってたし、門起さんって、一応呼んでおくか。いや、一応って…どんだけ失礼なんだ、私。

「超高校級の登り屋ね、聞いたことあるよ。どんなに高い山もどんなに高い塔も絶対に登れないものはない登り屋だって。富士山や世界一高い山もあっという間に登ったみたいだよ。」

「へー!やっぱり詳しいね!」

「うん…うーん、詳しいもなにも、ここにいる人達は有名人が多いし、ネットのスレに詳しく載ってるから調べてるなら知ってて当たり前っていうか、樹力ちゃん詳しい方だと思ってたんだけど。」

ぐっ…実を言うと、希望ヶ峰学園のクラスメイトに関してはなんにも調べてなかったのだ。言い訳すると、パソコンとかケータイってなんか苦手だから、ネットはそんなに使わない。だから希望ヶ峰学園に関しての基本的なことくらいしか、私は知らない。

「でも、本当に登ったことあるの?」

内心、こんなに小さい子が一人で(?)山を登ったなんて信じられない。標高が低い山ならともかく、富士山は日本で一番高い山だから、それをあっという間でなんて…

「馬鹿にすんなよ!!証拠写真ならいーっっぱいあるぜ!!ほら!」

門起さんはポケットから砂ぼこりで薄汚れた写真を何枚か出し、ドヤ顔でそれを私たちにみせた。雪で覆われた山の写真や、火山のてっぺんで門起さんがピョンピョン跳ねている写真。勿論、富士山でピースしている写真、他にも色んな、綺麗な景色の写真を見せてくれた。…写真自体は薄汚れてるけど。まあ、気にしないでおこう。

「写真の管理がなってないね」

…あ、八夂ちゃんが言っちゃった。

「八夂ちゃん!思っててもそんなこと言っちゃダメだよ!!」

八夂ちゃんは、はっと気付いたような顔をすると、ペコペコと謝った。

「…っ!うっせーな!!ふんっ!!」

門起さんは、ムスッとした表情をして、拗ねて少し遠くへ行ってしまった。八夂ちゃんや私がどんなに謝っても話を聞いてくれない状態になった。挨拶の初めからこんな陰険な雰囲気になるなんて…最悪だ…男子とあまり話したことないからどうすればいいかわからない…どうしよう…

「…あ、あの、どうかしましたか?」

「…?」

謝る方法を考えていると、白い髪でポニーテールの、黄緑色のYシャツを着た可愛いピンクのエプロンをまとった人がブルブル震えながらやってきた。寒いのかな?

「実は…かくかくしかじかで。」

「…そ、そうですか。」

今時かくかくしかじかで話通じるんだ!?!?話してみるもんだねえ…

「ま、任せてくださいっ」

白い髪の人はあわあわと慌てながら敬礼のポーズをし、門起さんのところへ向かった。

「あ?なんだてめー!!」

門起さんは私たちのせいで喧嘩腰だ。今に手をあげてもおかしくない状態だ。よほど写真のことを言われたのが嫌だったんだろうな…うう、なんだか申し訳ない。…ん?門起さんが無表情でこちらに向かってやってくる。

「今日のところは許してやるよ!!!!」

「「え」」

門起さんは大声で私たちを指さして言ったあと、またどこかへ言ってしまった。でも、あの言い方はもう怒りを感じなかった。許してもらえたというのは本当だろう。だって…今の彼、ニコニコ笑ってたし。

「…あのお猿さんになにか言ったの?」

八夂ちゃんは手に頬をあてながらきょとんとした顔で白い髪の人に聞いた。

「ま、まあ、その、あははは…」

白い髪の人は私たちに目をそらしながら、逃げるようにさよならー!!と言って門起さんと同じようにどこかへ行ってしまった。けど、

「ちょっと待ってよ、せめて自己紹介してよ。あなたも同級生なんでしょ?」

「な、なななななななな!!?」

八夂ちゃんは、ガシッと白い髪の人の服の襟を掴み、逃げるのをとめた。すると、白い髪の人は手や足をバタバタさせて、首を縦に何回も振っていた。八夂ちゃんは申し訳なさそうに服の襟をはなしてあげていた。

「む、村田 公太…です。よよ、よろしくお願いします…」

名前からして男の人か…髪の長い人って初対面じゃ男性か女性かわからなかったからな…それにしても、この人、今にも泣きそうだ。なにがそんなに怖いんだろう?もしやコミュ障だったり…?でも、それにしては怯えすぎているような…?

「あなたの才能は?」

八夂ちゃんはそんなのお構いなしにグイグイ聞いてくる。八夂ちゃんはストレートになんでもかんでも言っちゃう子なんだろうか。さっきもそうだったし。うう、この人とも陰険な雰囲気にならないことを願うよ…。

「ちょ、超高校級の…保育士、です。その、両親が、孤児院、設立…しているので。お手伝いたくさんしているので、自分で言うのもなんですけど、子どもに懐かれやすい体質で…だから…その、はい…失礼しますっ!!!」

「あ…」

今度こそ、公太さんは泣きながらどこかへ行ってしまった。

「あーあ、もっと色々聞きたかったんだけどなぁ」

…もしかしたら、八夂ちゃんって、意外と腹黒いのかもしれない。だって、今、腹黒い笑みをニヤニヤと浮かべているもの。…なんだか、八夂ちゃんが少し怖くなった気がする。でも初対面の時も私、面白がられてたしなあ…。色んな意味で、八夂ちゃんに注意しなければならないとこの時悟った。

「でも、保育士さんか。門起さんの機嫌を治せたのも、納得がいくね!」

口にだせないから心の中で言うけど、門起さんは小さいやんちゃ坊主みたいな子だ。門起さん、高校生だけど、ああいった幼稚園児みたいな人も公太さんに懐きやすいんだろうな。今度また門起さんとなにかあったら公太さんにお願いしよう…。

 

 

 

…ん?こんなところに薄ピンク色の薔薇模様のヘッドドレスをかぶった、人間並みの大きさの金髪のフランス人形が飾ってある。髪型は巻き髪になっている。服は赤と黒のゴシック調のドレスだ。口元は黒い糸で縫ってあるみたいだ。フランス人形って目がぎょろっとしているから間近でみると少し怖いんだよなー…

「はじめまして」

「えっ!?しゃべっ…!?」

フランス人形の首に飾ってある勾玉らしきアクセサリーがキラキラ光りだし、そこから、女の人のような電子ボイスが聞こえた。あ、まさかこの人形が…?いやいや、人形が喋るなんてそんな、漫画じゃあるまいし…。

「樹力 みかさん、ですよね、音々ちゃんからお話はお伺いしてます」

…!!や、やっぱり首元のアクセサリーからロボットのような電子ボイスが聞こえる…え、なに…?これ。ロボット…?

フランス人形のおでこにツンツンと指を突っついてみた。すると、なんということでしょう、フランス人形は痛そうに目をパチパチし始めた。ごめんなさいという謝罪の気持ちと同時に、あまりのびっくりさに声を出せないでいる。

「落ち着いてよ樹力ちゃん。この子はちゃんとした人間だから」

「えっ…人間…?」

な、なんだ…それならよかった。でも、触り心地がまさに人形のソレだったような…それに口…糸で縫ってあるし…!!

「…あ、あの、いきなり触ってすみません…」

…気になったけど、初対面の人にいきなり突っついてしまったんだ。失礼すぎる。ちゃんと謝らないと…今度は私自身がやらかしちゃったんだから…。

「大丈夫ですよ。ふふっ」

よ、よかった…許してくれたみたいだ。内心どう思ってるかはわからないけど。

フランス人形みたいな人はほわほわとした笑顔で右手を出してきた。握手してほしいという事だろうか。私は恐る恐る手をだして握手をしようと人形さんの手を握った。……人並みの暖かさ、体温を感じない。それに手も硬いプラスチックのような感触がする。やっぱり…人形みたいだ。この人本当に人間なんだろうか…?

疑いの視線を向けていると、人形のような人は私の目線を気にせず、またほわほわとした笑顔になって、

「私の名前は針菜 奏。はりな そうと言います。変わった名前なんですが、ソウちゃんと呼んでくれると嬉しいです。よろしくね、みかちゃん、八夂ちゃん…って呼んでもいいでしょうか?」

「うん、よろしくね。ソウちゃん。」

「みかちゃっ…あ、うん、よ、よろしく…ソウちゃん…でいいんだよね、うん。」

「…?どうかしたのですか?みかちゃん

「え!?いや、なんでもないよ!」

「…そう、ですかぁ」

……………………………っ。

「と、ところで、その、ソウちゃん、ソウちゃんの才能って…?」

「私ですか?超高校級の人形って呼ばれています」

超高校級の人形…?ど、どんな才能なの?見た目があまりに人形みたいだからそう呼ばれている…とか?

「ソウちゃんは、人形専門のアクセサリーや服をデザインしたり、デザインしたものを自分で作るのが得意なんだよね。彼女が考えたデザインは数億円もするって聞いたことあるよ。あ、そうそう、私、ネットでソウちゃんがデザインした数々の作品見たことあるよ。もう眩しかったよ、どの作品も」

「すっ数億円っ!?!?ええと、1、10、100、1000…0が8個も!?ひぇぇぇ!!」

一般人の私が考えただけでも恐ろしい桁だわ…!さすが超高校級…!…あ、自分の服もデザインしてるのかな?この服もかなり綺麗でオシャレだし…。数億円とは違うけど、この服も万円を越していてもおかしくないくらい煌びやかなドレスだ。

「まあ、八夂ちゃん、見てくれてるのですね。嬉しいです。」

ソウちゃんは嬉しそうにほわほわと笑っている。…彼女の勾玉とか手とか、彼女について疑問に思うことは多々あるけれど、初対面だし、まだあまり深く聞かないでおこう。穏やかな性格そうだし、もし仲良くなれたら色々知れるかもしれないし……なれるといいなあ。まだ少し怖いけど。

 

 

ソウちゃんとは一旦離れて他の人に挨拶しに行こうとすると、八夂ちゃんは顔を赤くしていた。どうしたんだろう、熱でもあるのだろうか?…ん?…八夂ちゃんの視線の先を見ると、黒いスーツを着た、サファイアブルーの髪色で、虎模様に黒髪が混じっている男性が緑色の本を読んで突っ立っていた。空色の瞳を持つ男性は八夂ちゃんと目が合うと優しく微笑んで、こちらに歩いてきた。
すると八夂ちゃんは慌てて更に顔を赤くし、手で顔を隠していた。そして急いで私の背後に隠れた。

「こんにちは。樹力さんに一谷さんですね。府楽さんからお話はお伺いしてます。」

男性はニコニコと笑いながらぺこりと頭を下げてお辞儀をする。私は普通に返事を返すけど、八夂ちゃんは声を裏返らせながら返していた。どうしたんだろう…?緊張してるのかな?でももう今更だし私より過剰に反応してる気がするし…なんなんだろう?

「ふふふ、どうしたんですか?一谷さん。」

「い、いいいえ!!なんでもないです!!」

八夂ちゃんはまた返事を返すと、顔を赤くしながらゆっくり、ひょこっと出てきた。

「あの、あなたは誰でしょうか…」

空気を読まず男性の名前を聞こうとすると、八夂ちゃんは「知らないの!?」とでも言いたげに驚いた顔をしていた。そりゃ初対面なんだから知ってる訳ないじゃない…超高校級には憧れてるけど、だからといって私、世間に疎い方だから詳しく知ってる訳じゃないし…。ソウちゃんや飛丸さんみたいに世界中に有名な子の事すら知らなかったんだから…と、心の中で愚痴を零す。

「自己紹介、させていただきますね。僕は蓮楼寺 護。れんろうじ まもる。よろしくお願いします。」

蓮楼寺さんは再びお辞儀をしてニコっと笑う。八夂ちゃんはまだ顔を真っ赤にしたままだった。

「あわわわわわわわわわわ」

「ねえ、八夂ちゃん、どうしたの?さっきから顔赤いけど。」

「えっ!?!?」

ちょっと心配になったので、肩をぽんぽんと叩き声をかけてみる。八夂ちゃんは少し落ち着いたようで、うるさくしてごめんなさいと謝っていた。

「私は大丈夫だけど…」

「そうですよ。元気な方は僕、好きですから。」

「すっ!?すすすすすすす!?!?!!?」

「ええ!?更に顔が真っ赤に!?どうしたの八夂ちゃん!!」

よく見ると頭から煙が沸騰したやかんのようにプシューッと噴き出している。大変だ、入学早々風邪引いたなんて笑えないよ八夂ちゃん!

「大丈夫ですか!?一谷さん!少々お待ちください。」

蓮楼寺さんは、一緒に持っていたキャリーバックを大急ぎで開け、冷気漂う水色のシート…要は熱さまシートを八夂ちゃんの身体を支えながら、おでこに、慎重に、ゆっくりと貼っていた。

「…!?はっ、す、すす、すみません!!」

意識を失っていたであろう八夂ちゃんは、ハッとすると、また私の後ろに隠れた。…あ、ひょっとして、これは熱じゃなくて…ああ、なるほどね。普段余裕満々の八夂ちゃんの意外な面を見たかもしれない。ていうか察するの遅いな、私。…こういうのに鈍いんだろうなあ、と今更自覚する。

「構いませんよ、あなたがなんともなかったなら、よかったです。」

「うう、優しい人だ…やっぱり噂通りだ…はうううう…」

八夂ちゃんはボソボソとなにかを言っている。なんとか耳を澄まして小さい独り言を聞く。…噂通り?そういやこの人はいったいどんな…?

「ところで、蓮楼寺さんはどんな能力をお持ちでしょうかっ!?」

向こうに合わせて私も敬語を使う。私も慣れない敬語のせいか微妙に声が裏返ってしまっていた。

「僕?僕は超高校級の自衛隊と呼ばれています」

「じ、自衛隊って確か…す、すごい人たちですよね?高校生でなれるってすごいと思います!!さすが超高校級のお方です!」

「あはは、すごい人たち、ですか、はは」

「ううっ!」

あまりにも小学生並みの表現に、そっぽを向かれて小さな声で笑われた。うう、すんごく恥ずかしい…!!いや、自衛隊って存在は知ってるよ、うん。でもどういうことをする人なのか具体的にはよくわかんないんだよね。日本が他国から攻められた時に守ってくれるってことしか。

「具体的に話すと頭が混濁してしまうでしょうし、なるべく簡潔に述べますと、日本における防衛組織の事です。主に他国からのの侵略から国を守ったり、災害から人々を守ったり…まあ、要は人を守る人達のことですよ。」

「あ、やっぱり大体そんな感じなんですね!守る仕事か…蓮楼寺さんに似合ってると思います!護って名前ですし!」

「あはは、そんなこと言われたの初めてです、嬉しいです。」

蓮楼寺さんは照れくさそうに小さく笑う。蓮楼寺さんって、親切だし、礼儀正しくて紳士的な人だなぁと、少しだけ会話して思った。こういう人って学校でモテそうだよね。あと、蓮楼寺さんに対する八夂ちゃんの想いも。…あ、八夂ちゃんに睨まれた気がする。…八夂ちゃんがいるところで蓮楼寺さんとお話しするのはもうやめておこう。身の危険を感じる。

 


ここの人たち、門起さん以外の男性って、優しい人が多いんじゃないかなあ、と思っていたのもつかの間。私はこの時思いもしなかった。まさか…あんなことになるなんて。

「そこのお二方!お待ちなすって!!」

渋い男性の声が聞こえた方を振り向くと、黒いなにかで汚れた白い和服の男性が巨大な黒い筆を振り上げた。かろうじて私は避けられたが、八夂ちゃんは思いっきり墨がかかってしまい、全身真っ黒になってしまった。今度は赤ではなく黒になっている。しかも全身が。

「だ、大丈夫!?」

「…う、うん、問題、ないよ…」

問題ないと言っているけど、声に元気、気力がない。そりゃあそうだ。いきなり見知らぬ人に墨をかけられたら、誰だって怒るし嫌だろう。私がかかったのはかろうじて右腕くらいだけだ。…まあ、幸い、私は黒いブレザー着てるから、大して目立たないけど…

「…っく、超高校級の幸運だというのに、何故私だけがこんな…びしょぬれに…?ああ、お気に入りの服が…」

全身から黒い液体がポタポタと地面に垂れている。八夂ちゃんは精神的ショックで今にも倒れそうだ。渋い声は空気を読まず無邪気に、高らかに叫ぶ。

「今のは初めましての挨拶でござる!!喜んでくれたでござるか!?拙者、超高校級の書道部、墨尾 克己でござる!侍と忍者の末裔でござるよ!!」

墨尾と名乗る男性は、悪気のだろうか、無邪気な笑顔で喊声に笑っている。今、挨拶と言っていた。これがこの人なりの初対面の時の挨拶なのかな?だとしたらはた迷惑な挨拶だ…

「女相手になにやってるんだ、バカじゃねーの?」

「む!?何奴!?」

突然?目の前に人のようなものが光の速さで通り過ぎていった。人のようなものは墨尾という人にぶつかり、墨尾さんはいつの間にか勢いよく地面に叩きつけられて、更には踏まれていた。墨尾さんはじたばたと暴れて抵抗するが、その人を踏んでいる足は更に力強くなり、ボキッという何かが折れた音がした。墨尾さんは声にもならない呻き声をあげている。

「…よわ。男のくせに情けない。」

先ほど通り過ぎた人はどうやら女性のようだ。金髪と銀が混ざったような髪色で、目と目の間に一文字傷があり、上半身はほぼサラシを巻いていて、上着一枚も着ていない露出度が高い恰好をしている。下半身はいかにも禍々しい色のズボンを履いている。

「か、かっこいい…!!」

「……」

倒れている墨尾さんを他所に、女性の靡く二つの髪の束をみながら呟いた。女性は私がみていることに気が付くと、こちらに振り向くが、すぐそっぽを向いてしまった。
女性は、墨尾さんをゴミをみるような目で見た後、飽きたかのように足を上げ、ふらふらと歩き、屋上の柵によりかかって、あぐらで座って、いびきをかきながら眠っていた。

「…超高校級の書道部、超高校級の狩人。この二人も結構有名なんだよ。墨尾さんは小学生の頃師範っていう書道で一番すごい階級をとっているらしく、聞いた話によると筆を振る豪快さにしてあまりにも達筆すぎる字から、世界中の書道好きから弟子申請が止まないんだとか。あの女の人は伊瀬 和為さん。伊瀬さんは…ううん、残念ながらこの人については詳しくないんだよね。狩人として各地を渡り歩いているってことしかネットで明言されてないし。まあ、高校生で狩人やってるなんて滅多にいないだろうし、狩人ってだけでもすごいけどね」

「へ、へえ」

…真っ黒い物体はイライラしたオーラを放ちながら小さな声で2人に関して説明してくれる。黒い液体はまだポタポタと垂れたままだ。あまりの無惨さに私は軽い生返事しか出来なかった。

「あ、あの、八夂ちゃん、着替えて来たら?あ、予備の服とかある?」

「…はあ、一応あるよ。…着替えてくる。樹力ちゃんは先に回っててよ、私、着替えるの時間かかるし。…あ、エレベーターの裏で着替えるから…男子にはそこに来ないでって言っといてくれる?…あ、でも蓮楼寺君ならいいかも…」

最後にブツブツと変な声が聞こえたけど聞かなかったことにしよう。

 

 

 

さて、今度は一人で挨拶周りか…不安だな。あー、やっぱり八夂ちゃんくるまで待…

「っふふ、さっきの騒動、見てたわよ。いやあ、見物してて面白かったわよ。」

「え…え!?」

ラベンダーの香りがする方を向くと、いつの間のか私の真横に焦げ茶色のブレザーに青いチェック柄スカートをまとった長い黒い髪の女の子がいた。ところどころ寝癖のように髪が跳ねている。跳ねたところの毛先は宝石のように透き通ったように輝いている。もしかして染めているんだろうか。

「なに、なんで驚いてるの?あなたビビり?」

「だ、だっていきなり真横にいたらビックリするよ!」

「あっそう。」

ビビりと言われた上にそんなあっさり返事を返されるなんて…うう、へこむなあ。

「……で?」

「えっ?」

いきなり『で?』と言われた。私、なにか言ったっけ?ビックリしちゃったことくらいしか、言ってないはず…。

「いつまでそこにいるの?歩くのに邪魔なんだけど」

私より少し背が高い彼女は、まるで深い深い闇のような色をした目で見下ろし、棘のある言葉を吐いた。見下ろす視線は、まるで私を蔑んでいるかのようだ。いや、実際そうなんだろう。

「なっ!?邪魔!?そんな!そっちから話しかけておいて!?」

「さっきので話が終わったことくらいわかるでしょ。そんなこともわからないの?馬鹿ね」

ぐ、ぐぐ、初対面の人にいきなり毒づかれた…しかも理不尽だ…。なんなのこの人…けど、ここにいるってことはクラスメイトなんだよね。じゃあ挨拶しなきゃだよね。…うう、今のでこの子ちょっと苦手になっちゃったんだけど…ええい、引いてダメなら押してみろ!仕返しに強引に自己紹介してやる!

「あの!!私樹力 みか!!」

「あのオチャラケ女から聞いてるから知ってるわよ。」

あっさりと返事が返ってきた。オチャラケ女とは恐らく音々ちゃんのことだろう。はっちゃけてるし。今もステージの方をチラッと見るとまだ踊ってるし。…うう、こっちが名乗れば向こうも名乗ってくれると思ったんだけどな。彼女は黙ったまま一向に喋ろうとしない。ていうかさっさとどこかに行こうとしている。まずい、せめて名前だけでも聞いといた方がいいよね…

「宝錠 影羅。」

「えっ」

こっちが名前を聞こうと試行錯誤考えている間、私に背中を向けて彼女は名乗った。続けてまた何かを言った。

「…ほうじょう しゃら。超高校級の鑑定家。あなたが知りたい情報は一通り伝えたわ。これでいいでしょ」

「あ…うん。」

「じゃあね」

コッコッとヒールの音を響かせながら、彼女は私の目の前から去った。…あの子、なんだか掴めない人だな。…あとやっぱりちょっと苦手かも。…見下ろされた時………どうしてだか、ソウちゃんのとは違う、おぞましい恐怖を感じたし。

 

「あの、すいませーん」

「(・∀・)/"ハーイ」

ふらふらと歩いていると、2人の男性がこちらにやってきた。一人は半袖の、ラケットとボールが描かれている黒いユニフォームらしきものを着た、ハニーブロンドの髪色をした人と、黄土色のつばなし帽子をかぶった、ミカン色の髪の人がで話しかけてきた。

「いきなり話しかけてごめんね、自己紹介、しにきたんだけど。」

「あ、いえいえ!私もしようと思ってたところなんで!」

ハニーブロンドの男性は、ペコりと頭を下げると、自己紹介をし始めた。この礼儀正しい感じと優しそうな雰囲気、どこか蓮楼寺さんに似てると思う。

「僕は板是 九。いたぜ きゅうっていうんだ。よろしくね、樹力さん。」

「あ、もう知ってるんだ!」

音々ちゃんが広めてくれたおかげでこっちが名乗る手間は省けるけど…うーん、広まってることに対して恥ずかしいようなそうでもないような。

「うん。あ、僕のことは気軽にキュウとか、九太って呼んでもいいよ!」

「九太?」

「うん、さっきあそこの女の人に自己紹介してたらそう名づけられて。」

板是君は、伊瀬さんの方に視線を向ける。伊瀬さんは未だにいびきをかきながらぐーすかと寝ている。

「あ、ありがとう。でも男の人の名前って呼び慣れてないから苗字でいいかな?」

「あはは、いいよ。ご自由に~。」

「(・∀・)/"ハーイ(・∀・)/"ハーイ」

「わっ!」

「(・∀・)/"ハーイ(・∀・)/"ハーイ(・∀・)/"ハーイ(・∀・)/"ハーイ(・∀・)/"ハーイ(・∀・)/"ハーイ」

板是君と一緒にいた、帽子を被った人が、気付いてほしいかのように間に入って手をブンブン振り回している。この人、なんだか、口は笑ってるけど、目が全然笑ってないように見える。

「あ、入菊君、入菊君も自己紹介しなよ」

「いり…ぎく?」

「( ̄▽ ̄)ゞラジャ。…入菊 新。いりぎく さら。」

名前を名乗った瞬間、表情を無くし、無表情になった。前髪の真ん中の縛ってある青いウサギのヘアゴムも、どういう原理かわからないけれど、さっきまでニコニコと笑っていたはずなのに、表情を無くしていた。

「ああ、彼、表情つくるの苦手らしくて。メールでよく使う顔文字の真似しないと、うまく表情をつくれないんだって。」

「m(_ _)mゴメンネ」

「あ、ああ!いいんだよ、気にしないで!」

宝錠さんや伊瀬さんのように、怖い人なのかなと思ったけど、話を聞くとどうやらそうでもないらしい。とりあえず、顔文字をよく使う人なんだって覚えておこう。

「ところで、二人はどういう理由で選ばれたの?」

「ん?僕かい?僕は超高校級の卓球部…といっても、ただのしがない卓球部員で、勝手に選ばれただけで、そんな大そうな人じゃないよ、僕は。」

板是君がいうこの言葉、絶対嘘、もしくは卑屈だ。希望ヶ峰学園に選ばれたということは、『超』がつくほど一流ということだ。…悪気はないんだろうけど、すごい才能を持ってる人が卑屈を言うと、ほんのちょっぴりの嫉妬心が芽生える。悪気がないなら尚更だ。…けど、幸いほんのちょっぴりだから、すぐに消えるけど、こんな気持ちは。…我ながら器の小さい女だ。

「ん?どうしたの?顔色悪い?」

「え!?い、いや、大丈夫だよ!!」

うう、顔に出てたか…やっぱりポーカーフェイスが苦手なようだ、私は。

「(・∀・)?」

「い、入菊君は?」

「超高校級の新聞記者と呼ばれている名前のとおり新聞を書いている入菊新聞って知ってるかなお父さんが運営してる新聞会社で俺もそこで働いていて」

話を逸らすように入菊君に顔を向ける。彼は顔文字の真似をしたまま、ペラペラと早口で、息継ぎもせずに話した。早口すぎて冒頭しか頭に入ってこなかったのは内緒にしておこう。

「入菊新聞はよく読んでるよ!あまりテレビとか見ないから、世間の情報源はそこで入手してるし!」

「!!(-ω-)bヤッタネ!」

入菊君は嬉しそうにグットポーズをし、そして板是君とハイタッチしていた。…無表情で。

「にしても、二人とも仲いいんだね、中学からの知り合いなの?」

「いや?今日で初対面だよ?」

「えっ!?」

板是君がきょとんとした顔で言う。初対面でこんなにも、ハイタッチできるほど仲良くなれるものなの…?私なんて人とちゃんと仲良くなるのに1か月もかかるのに…!あ、いや、人に寄るけどね、そりゃ。音々ちゃんと八夂ちゃんとは、まだ知らない事が多いから、完璧に仲良くなったとは言い切れないし…。

 

 

 

「おねーさーん!」

「えっ?って、ぎゃああああ!?!?」

足元に違和感を感じ、聞こえた無邪気で明かるげな声と同時に下を見ると、ダンゴムシの大群が私の足元に群がっていた。恐怖のあまり、私は微動だに動けず、石のように固まってしまっていた。

「あははははは!!困ってるー!!」

声の主、エメラルドグリーンの髪をした女の子のように見える茶色く汚れた白衣(?)を着た子は、ゴロゴロと転がって笑っていた。

「ゴロンちゃんたち!戻っておいで!」

ダンゴムシたちは、声の合図と同時に私の足元から退き、女の子の身体のてってと登って、女の子の肩にかけてある虫かごに戻っていった。その光景は、虫が少し苦手な私にとっては悍ましかった。

「シシシシッ、びっくりしたでしょー」

頭の上にかけている眼鏡を手で掛けなおしながら、誇らしげに言った。虫の触覚のように見えるアホ毛もひょこひょこと動いていた。

「あ、あのお、あなたは?」

「ぼくー?ぼくはねえ…ああ、人間の名前で名乗らなくちゃなー、面倒くさいなあ。うー、わかったよう、パパー。」

「…?」

女の子は虫かごの中にいる虫…アゲハチョウに向かってブツブツとなにかを喋っていた。む、虫が好きなのかな?この子…。

「ぼくは密美津 蝶々。みつみつ ちょうちょうだよー。よろしくね、人間のお姉さん」

「え?う、うん、よろしく…。」

この子、女の子じゃないのかな?『ぼく』とか言ってるし…。声も中性的で、名前も特徴的だからわからない…。私も人の事言えないけど…。

「あ、あの、君は女の子なの?男の子なの?」

「…?女の子?男の子?なにそれ。」

「ええっ」

「ぼくはぼくだよ?女の子とか、男の子とか、知らなーい」

密美津さんはけだるけな口調で言う。…この言い方、まるで本当に知らないような言い方だ。でも、自分の性別がわからないなんて、そんなことあるんだろうか?

「ねえ、お姉さん、お姉さんはなんていうの?名前」

「え?ああ…樹力 みかだよ。」

みんな当たり前のように知ってたから、なんだか久しぶりに名乗るような感覚だ。

「ふうん。まあ、名乗ったところで人間さんに興味はないけどね。」

ううっ、興味ないってドストレートに言われると精神的にくるものがあるな…。

「じゃ、じゃあなんで聞いたの!?」

「パパとママに聞けって言われたんだもーん」

「パパ…?ママ…?」

それって、まさか、さっきからブツブツと話しかけている虫かごの中に入ってる虫たちのことを言っているのだろうか?この子のご両親らしき人物は、見当たらないし…。

「あ、あの、あなたはどんな理由で、その、選ばれたのかな?」

「えー?選ばれ…?なにが?なんのこと?」

密美津さんはきょとんとした顔を浮かべている。あれ…この子、もしかして何も知らないで入学しようとしてたのかな?

「ん?なあに、ママ。…ふむふむ、あ、そう!超高校級の虫博士ー!…って、言えって、ママが。」

密美津さんはまた虫かごに向かって話しかけ始めた。どうやら私の予想は当たっていたようだ。

「あー、あなたといるの飽きた。じゃあねー、人間のお姉ちゃん。また遊んでねー?シシシッ」

「ちょ、ちょっと!」

…あの子のこと、よくわからないまま会話が終わっちゃった。今までの中で一番謎が深い子のような気がする。…でも、虫は苦手だからもうあまり近づきたくはないかなー…。

 

 

さて、残りはあと2人か…。ん? 

「貴様は何者だ?」

「……」

なにやら険悪な雰囲気で男女が会話している。会話している、という言い方が適切かどうかはわからない。見たところ長髪のピンク髪の女の人が一方的に話しかけているだけで、片方の、灰色髪に黄緑のグラデーションがかかった、緑色のパーカーを着た男の子は返事しないままボーっと突っ立っている。よく見ると、右目を包帯で巻いている。左目は隠していないけど、目の下に濃い隈があり、顔は痩せ細っていていて、肌の色も、白に近いように肌白いし、なんだか生気を感じられない。

「貴様は何者だと、そう問いている」

彼女は男の子に指を立てたまま、何回も質問するが、やはり一向に答えようとしない。女性は諦めたのかため息をついて、何故かこちらにやってきた。足を見ると重そうな黒い足枷がついている。けど彼女はスタスタとそれを引きずって歩いてこちらに向かってきた。

「貴様は何者だ?」

男の子に聞いた質問を、今度は私にする。少し慌ててしまったが、私はまた名前を名乗った。

「ほう、樹力 みかというのか。失礼、こちらから名乗るべきだったな。私は輝烈統 在処、てれす ありかという。」

まるで学者のように大人っぽく、男性のような口調の女性は、気取った笑い方をしながら名乗った。輝烈統さんか。失礼だけど私以上に変わった苗字だ。言わないけど。

「ところで、その、あの男の子は…?」

「ああ、彼か?彼の名は刻風。ときかぜというのだそうだ。」

「刻風…君?」

あれ、てっきり名前がわからないからずっと聞いてるんだと思ってたけど…。

「ああ、名前なのか苗字なのか、どちらかはわからないが、彼は刻風という名前しか名乗らなかった。自分が学園に選ばれた理由すらも答えない。だから何度も何者だと聞いていたのだが、全く話そうとしない。謎が深い少年だ。しかし、謎は簡単に解けてしまっては面白みがない。ふふ、私に挑戦とはいい度胸だ…」

輝烈統さんはヒソヒソと顔を下げて不気味に笑っている。怖いというよりどっちかというと怪しい人だ、この人。

「ところで、あなたはどういう理由で、その」

「ああ、私か?ふむ、超高校級の哲学者と呼ばれているな。まあ、私の家系が有名な哲学者というだけで、私自体はそれほど大したものではない。ふふ、みかといったな。」

「は、はい、樹力です…」

「…そんなに堅苦しくなるな。同じクラスメイトではないか。」

一見、学者さんだからこちらが堅苦しいと思っていたけど、どうやらそうでもないらしい。意外とフレンドリーな人なのだろうか。でも、やっぱりどこか不気味というか、怪しい雰囲気を出しているのは間違いない。

「そういえば、貴様はいったいどういった肩書を持っているんだ?」

「私?私は…」

そういや、ずっと聞かれてなかったな…それほどみんな、私に興味の欠片もないんだろう。まあ、私ってモブ的存在だから、仕方ないんだろうけどさ。うう、やっと輝烈統さんが聞いてくれて少し感動したかも。

「私は…超高校級の」

そう、言いかけた瞬間、また、声が私を遮った。まるでタイミングを計ったかのように。

「うぷぷぷぷ!皆さん、やっと集まりましたね!」

この陽気で能天気そうな声、1階で聞こえた声と同じだ。どこからだ、とあたりを見回していると、ステージで白い煙とその中にいる影がもくもくと現れた。

「What!?煙がっ!?ゲホッゲホッ!!」

踊っていた音々ちゃんは、煙を浴びると、咳き込み、急いでステージの下に下りた。

「ってぇ…」

音々ちゃんの足は、見事にズィヅさんに命中してしまっていた。明らかに痛そうだ。

「Oh!ソーリー!!ズィヅ!!」

「……はあ。」

「うわわ、いったいなんでござるか!?」

「なにが起きるのかなー?」

「一体何事?」

着替えてきた八夂ちゃんも戻ってきて、まわりの人達はステージの煙に注目している。煙は、だんだんと晴れてきて、やっと姿を現した。それは…。

「うぷぷぷぷぷ!!」