甘党と苦渋党 3
あれから数分後、スフレはぼうっと立ったまま、どこにも動かず、 なんにもしませんでした。
謝りに行ったほうがいいのでしょうか。それとも、 フラウィアちゃんたちとはもう離れるべきでしょうか。
…わからない、無知のスフレには。なんにも。どうしたら、 いいの?
「ぐ…うう」
あっ…眠っていた眼鏡君が起きました。
「あ、あのぉ…」
「何だ」
眼鏡君は起き上がると同時に、 瞬時に口にガスマスクをつけました。
「あ、あの、そのガスマスクは…?」
「俺は砂糖の入った菓子は嫌いなんだ。匂いだけでも無理だ。 だからマスクで匂いを防いでいる。…で、紙のマスクじゃ、 結局匂いを嗅いでしまうから、ガスマスクにしたというわけだ。」
「そ、そうですか…。スフレ、 ガスマスクしたことないからわかりませんが、 それで匂いは防げるんですか?」
「問題ない。…恐らく」
恐らく…ですか。ま、まあ、大丈夫なのでしょう。 これでやっと眼鏡君とちゃんと話せるかもしれません。 話しかけてみましょう。
「あの、眼鏡君」
「…誰だ、眼鏡君とは」
眼鏡君はジトーッとこちらをみつめています。 眼鏡君は眼鏡君なのでは?
「あなたの事ですが…」
「……っ!?」
「あっ!?」
眼鏡君は、ベッドの上からズッコケて、 床とぺったんこしてしまいました。
「…俺は眼鏡君じゃない…確かに眼鏡をかけているがな…」
眼鏡君は、さっと起き上がり、眼鏡に手をあてて、 ゆっくりと口を開きました。
「…アウォーだ。」
「青?」
「アオじゃない。アウォーだ。」
アウォー…それが眼鏡君の名前なのですね! ちゃんと覚えなければ!
「お前は?」
「スフレですか?スフレは…」
「もういい。わかったから。スフレか。…よろしく。」
「あ、あら…すごいですね! 自己紹介する前にスフレの名前がわかっちゃうなんて!」
「……馬鹿か?」
なっ…!?いきなり悪口ですか!?
「ひ、酷いです!馬鹿だなんて!」
「…すまん。」
むぅ…まあ、 そういう風に誤魔化さないで正直になんでも言ってくれる方は、 嫌いではないですけど…
レマ君も素直(?) に悪口言ったりしますがネチネチした言い方ですから怖いですし…
『図々しいねぇ』
……ああ、どうしましょう。 レマ君の事を思い出すと先ほどの喧嘩を…
「…なにがあった」
「えっ!?スフレの心の中読んだんですか!?す、すごいです…! 」
「…いや、声にでてたぞ」
え…あ…いつの間に…。 スフレとしたことが、うっかり……。
「…まあ、悩みがあるなら聞いてやらない事もない。…話せ。」
「は、はい!」
スフレはめが…アウォー君に真剣に話を聞いてもらいました。
「…喧嘩か」
「……はい。…スフレ、間違ってしまったんでしょうか。… アウォー君、わかりますか?」
この子に聞いて答えがでるといいのですが…。
「知らん。間違っているか間違ってないか、 それはお前自身が判断することだ。俺が決める事じゃない。 自分で考えるんだな。」
「…!」
聞けば答えがわかる、 なんて甘い考えをしていたスフレが馬鹿みたいです。…そう、か。 判断するのはスフレか…。そうですよね、 これはスフレ自身の問題なんですもんね。
スフレはあの時、後悔したくないからあんな事を言った。でも、 結果、フラウィアちゃんを泣かせてしまったり、 レマ君を怒らせたりしてしまった。
いい方向に進んでいないのなら、 やっぱりスフレは間違っていたんでしょうか…うーん、 1人で考えてもまだわかりません…。
「…まあ、だが…」
「え?」
「…いや、なんでもない。きにするな」
「えー!そ、そんなあ!」
き、気になります…!い、一体なにを言おうとしたんでしょうか… ?しつこく聞いても絶対教えてくれなさそうですし…諦めますか… 。
それにしても、一見、 アウォー君もレマ君みたいに冷たい人なのかな、と思いましたが… しっかりとスフレの話を聞いてくれました。
人を突き放すような言い方をしますが、 それがアウォー君の優しさなんでしょうか。…なんて、 前向きに捉えちゃいましたけど…実際はどうなんでしょう。
…それから何分か後、スフレとアウォー君は、 どういう訳か世間話に発展しました。
「何故ですか!スフレは目玉焼きは砂糖派ですよ! それ以外なんて認めませんわ! しょっぱいものや辛いものはあまり得意ではありませんしね!」
「砂糖なんて恐ろしいものをかけるなんてどうかしてるな。 普通はわさびだろう、わさび。」
「わさび…?聞いた事ないです…」
「これだ」
アウォー君は、ポッケから緑色の細長い入れ物を出し、 ぐっと力を入れると、その中から黄緑色の物体がでてきて、 スフレの口に向かって飛んでき……辛っ!?な、 なんですかこのツーンとした辛さは!? 一口舐めただけでも体がビリビリします…これがわさび!!
こ、こんな辛いものスフレには無理です! 少し舐めただけでビリビリします…おまけに頭も…クラクラ… します…。アウォー君、よくわさび食べれますよね…。 もしや甘いものが苦手な分、辛いものが大好き、 という事でしょうか…!?
「それは関係ない。確かに甘いものは大嫌いだが、 だからといって辛いのが大好きという訳ではない。ほどほど好き、 という程度だ。ちなみに俺が一番好きなのは苦いもの、 例えば抹茶だ。覚えておけ。」
…またしてもうっかり喋ってしまったんでしょうか。 それともテレパシーでも使えるのでしょうか…。
「いや、馬鹿の考えてそうな事は言わなくてもだいたいわかる。」
ま、また馬鹿…って…。うう、さすがにもう凹みますよぅ…。 次からは読まれないようにしなければ!!
「…随分と、ストレートなんですね。アウォー君って。」
悔しいので、あの子みたく、真っ黒に微笑んでみました。 どうでしょう、怒りますか?怒っちゃいますか?ふふふふ、さあ、 怒っちゃってください!
「思った事をそのまま言っただけだ。」
……それをストレートというのでは…?ていうか、 真顔で返答されました…逆にこっちが悔しいです…。 おまけに恥ずかしい…。
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微かに橙色が残る、藍色の空の下では、紫色のネズミが、 また1匹静かに佇んでいた。
「…そろそろ、『彼女』と同じになってもいい頃かな。」
と、言うと、辺りは闇色の霧に包まれた。 だがその霧はほんの数秒で晴れた。…晴れた場所には、 もうネズミはどこにもいなかった。
代わりに、1枚の果実の匂いが漂う藁半紙と空白が残されていた。
『Please look for a 』
「…絶対、ここにはあの子が戻ってくる。花の好きなあの子が。」
ーTUDUKUー
私はたまご焼き派です((
ア「…おい」
マイ「だってー目玉焼き食べれないしー。あ、アウォー君の紹介についてはまた後ほど!」
ス「眼鏡君…ではなく、アウォー君、名前判明してよかったです!」
ア「…何故眼鏡君だった…。あ、今回は今までシリアス展開だった分ギャグを入れてみたようだ。」
ス「でも、やっぱりまだ謎が多いですよね。特に最後。」
ア「ネズミは何者なんだろうな。…まあ、俺には関係ないが。…さて、失礼する」
ス「ではでは!」
マイ「ちっちゃいアウォー君は性格明るいですのう」