読者です 読者をやめる 読者になる 読者になる

マイ ネーム イズ マイ

不定期更新しますですー

医者見習い 8

あの少年の言葉に疑念を感じながらも、あの3人を追いかけ、やっと目的の街に着いた。本当に着いた。
 
ここには、俺が求めている、グリフストーンというものがあるらしい。グリフストーンというのは、綺麗に透き通った緑色の小石だ。
 
さて、グリフストーンはいったいどこにあるのやら…。あたりを見回しても小石なんかどこにも落ちていない。本当にこんなところにあるのか?
 
隅から隅まで街の中を探した。だけど一向に見つからず、代わりにたくさんの人々の視線を浴びてしまった。街中で頻繁に動いていたら、目立つのは当然だ。
 
俺はたくさんの視線から逃げるため、一目の少ないところへ走った。
 
 
「ぜぇ、ぜぇ…」
 
走った先はとても巨大な建造物の前。ここは不思議な事に、周りに誰一人もいなかった。
 
「…はぁ、しまった…」
 
勢いで走ったため、来た道を覚えていないのだ。どうしようか、戻るに戻れんぞ。どうやって帰れば…
 
 
「どいてどいてどいてー‼︎‼︎」
 
前方からものすごいスピードでなにかが走ってくる。あまりに驚いてしまったため、俺は
 
「はぁっ‼︎」
 
ポケットの中にあった保冷剤を投げた。保冷剤は顔にあたったようで、走っていたものは、冷たいと大声で叫び、勢いよくすっ転んでしまった。こいつは…あの宿の赤髪の女。
 
「ひぃぃ、顔がひんやりする…なにすんのよあんた‼︎」
 
「す、すまない。悪気はないんだ」
 
俺が慌てながら謝罪すると、女は申し訳なさそうな顔をした。
 
「あ、私もごめん、い、急いでたもんだから…」
 
先ほどの気迫はどこへ行ったのやら、女は随分とおどおどしていた。
 
「…あれ、あんた朝のお客?」
 
「…ああ、覚えていたのか」
 
…こいつ、俺の事覚えていたのか。意外だな。忘れられてるものかと。
 
「あ‼︎人と話してる場合じゃない‼︎医者呼ばないと‼︎」
 
「……医者…だと?」
 
医者という言葉を聞いて、ピクリと体が反応した。
 
「そう、人が倒れてて大変なのよ‼︎‼︎しかも血吐いてて‼︎」
 
吐血…なにやら重大そうだ…よし。
 
「そこへ案内しろ。」
 
「はへ…?」
 
「いいから、早く。」
 
「………わ、わかったわよ‼︎なんとかしてくれるんでしょうね⁉︎」
 
「ああ、出来る限りな。」
 
人と話すのが苦手な俺にしては、かなり強引に進めたと思う。医者、という言葉を聞いて、つい興奮してしまったのだろう。俺の父親は医者だ。だから俺もそれに憧れていて、医学を毎日勉強している。…まだ子供だし、未熟だが、それなりに診察や薬を作ったりなどはできる。…よし。
 
 
 
案内されたのは先ほど見た建造物の中。びっくりだ、我が家より広い構造をしている。自分の家より大きくて広い建物に入るのは初めてだ。
 
 
「えーと、名前なんだっけ、あんた」
 
「アウォーだ」
 
「あんた、医者なわけ?」
 
「…正確には、まだ見習いだ。だが、ある程度はできる。安心しろ」
 
俺を信用していないのだろうか。…当然か。小さい子供が、治療なんてできっこない、と思うのは普通の考えだ。…完璧に治せなくとも、応急処置くらいはできる。医者見習い、だからな。
 
案内された部屋に入ると、見覚えのある面子が揃っていた。まあ、赤髪の女がいる時点で、予想はついていたが。
 
「「あ、眼鏡君‼︎」」
 
スフレと黄緑髪の女が、ほぼ同時に声を揃えて言った。眼鏡君って…俺か。…ツッコミたいが、今は患者の方が優先だ。こういうのは一刻も争うのだから。
 
「なにがあったか、簡潔に述べてくれ。」
 
キッと目を細めると、黄緑髪の女とスフレは、ビクッと震えていた。赤髪の女は、おかまいなしに俺の方を向いて話し始めた。
 
 
 
 
……聞いた話によると、この3人はとある用事でレマという人物のもとへ向かったという。だけど、ノックをしても呼んでも返事が来ず。だが鍵が開いていたので仕方なく許可なく家に浸入し、家の中を探索したら…
 
「…レマ!!」
 
真っ赤な血を吐きながら、床に倒れていたという。床の周りには青白い液体と本が散らかっていたらしい。恐らく読書中になにかが起きたのか…?
 
「う…ぐ…ぐぐ…」
 
「…ん?」
 
ベッドにねていた少年は、苦しそうな顔をしながらゆっくりと起き上がった。
 
「レマ!大丈夫なの?」
 
黄緑髪の女は、心配そうに少年を支えていた。
 
「…あり、フラウィア?なんでここに?…って、なにこの人だかりっ…!?ゴホッ、ゴホッ…」
 
手で口を抑えながら咳をし始めた。…微かに手の隙間から赤いものが溢れていた。少年は急いでそこにあった布巾で自分の手と口を拭いていた。
 
「無理に喋るな。体に障るぞ」
 
「はぁ…?つうか、どちらさまですかあんた。」
 
…話によると、こいつが3人の言っていたレマだろう。…ん?こいつも見覚えがあるな。…ああ、思い出した、俺が甘いもの嫌いなのを馬鹿にしてきた奴だ。だが、こいつは俺の事を覚えてないようだ。よかった、覚えられていたらまた馬鹿にされ…
 
「ああ!あの貧弱そうな眼鏡くんだね!いやぁ、影薄いから忘れてたわ!うっかりうっかりー」
 
…………水酸化ナトリウムを投げたくなったが、ここは…我慢だ。我慢。こいつは患者だ。そう、患者。患者には最低限優しく接しろと父親が言っていた。今の言葉なら我慢できる許容範囲だ。落ち着け俺…。
 
「レマ!駄目だよ‼︎この人、レマの病気治してくれるって‼︎だから意地悪しちゃ駄目!」
 
黄緑髪の女は、レマの頭をポンと叩いた。すると、ついさっきの生意気な態度とは全く違い、素直に謝り、素直に大人しくなっていた。こいつは黄緑髪の女に弱いのだろうか。
 
「…で、本当にあんたどちらさん?あの時は自己紹介やらなんやら、してなかったけれど。」
 
こいつに自己紹介するのはなんだか身が引けるが仕方がない。
 
「…アウォーだ。医者見習いだ。」
 
医者見習い…という言葉を聞いて、赤髪の女以外みな唖然としていた。医者見習いなんて、そうそう聞くものじゃないだろうし、医者見習い?こんな状況でふざけているのか、おままごとじゃないのだから、と考える者も多いだろう。特に、レマは目を細めて、ドン引きをしたような顔をしていた。そして、手のひらをブラブラと動かし「…あ、そうですか、どーぞお引き取りくださーい」と冷たい口調で言われてしまった。
 
 
「ちょっと!なにその言い方!治してくれるって言ってんのよ⁉︎そんな言い方ないんじゃないの⁉︎」
 
俺を擁護してくれたのか、赤髪の女は、ベッドのすぐ横にある壁をドンと叩き、鬼のような気迫をレマにぶつけていた。なんとなく母親を思い出してしまったのか、俺は背筋が凍ったが、レマはまったく怯まなかった、むしろ…
 
「見ず知らずの、しかも自分と同じくらいの子供に、あなたの身体治しますなんて言われて信用できるとでも?脳みそ足りてないんじゃない。ああごめーん、見た目からして馬鹿丸出しだもんねぇー?」
 
こういった嫌味や悪口を怯まずに続けていた。いい度胸をしているな、と渋々傍観していた。
 
「こ、い、つぅぅ…‼︎やっぱムカつくわぁぁ…‼︎‼︎」
 
赤髪の女は、拳をぐっと握りしめていた。だけど、手をださず、鬼のような表情をしたまま、じっと我慢していた。
 
…ところで、今の会話で気になった事がある。黄緑髪の女は、レマの事を病気と言っていた。吐血している時点でただの風邪ではないが、普通、いきなり病気だなんていうだろうか。俺や俺の周りは少なくとも言わないだろう。…相手の気に障る事はあまりしたくないが、仕方ない。
 
「お前、病気なのか?」
 
「あ?いきなり失礼じゃね?」
 
細い目でにらまれてしまった。…予想通りの反応だった。やはりいきなり病気だなんて言うのは相手の気に障る。だがうまく聞く言葉見つけられずに、ストレートの言ってしまった。コミュニケーションが苦手な部分がここででてしまったか。…仕方ない、今回ばかりは更に失礼な事を重ねるが、こいつの弱点を利用させてもらうぞ。
 
「……」
 
俺は黄緑髪の女をじっと見た。そう、名前がわからないから、何故いきなり病気と言ったかを説明出来んのだ。
 
「な、なにかなー?眼鏡君?」
 
「…名前、聞いてない」
 
黄緑髪の女は、ハッと気付いた顔をして、自己紹介をした。フラウィアというらしい。どこかで聞いた事あるような気がするが気のせいだろう。多分。
 
「フラウィア…さんが、お前の事を病気と言っていた。だから…なにか、病気を患っているのではないかと考えたんだ。」
 
「………チッ。」
 
レマは複雑そうな顔をして俺を睨みながら舌打ちをした。やはりこいつは、フラウィアさんに弱いのだろう。さっきも頭を叩かれた時、大人しくしていたしな。
 
「はいはいそうです僕は病気患っています。ですが、もう症状は治まっています。それに薬もちゃんと…あれっ…?」
 
レマはポケットの中を焦りながら探っていた。しかし、ポケットの中は空の様で、レマの顔は次第に真っ青になっていった。
 
「あ…終わったな…こりゃ。」
「レマ⁉︎」
 
ポケットに手を入れたまま、レマは力が抜けてしまったかのようにベッドの中に倒れた。
 
「…あれがないと、また…ねぇ、僕が倒れていた部屋に、薬の容器みたいなのなかった…?」
 
声はどんどん力をなくし、掠れていっている。…俺は現場にいたからよく知らない。こいつらはどうなんだろう。
 
「あ、あの!スフレ見ましたよ!薬の容器かはわかりませんが…」
スフレは手から、1滴にもならないくらい少ない液体が残ったプラスチックの容器をだした。
 
「…え、まじ…?は、はやく…よこ…せよ」
 
レマは驚いた表情をしていたが、叫びはしなかった。声も、もう完全に掠れていて聞き取りにくくなっている。
 
「といっても…全部溢れていたんですけど…」
 
「…ま…じ…かよ…最悪…だ」
「わわわわ⁉︎」
 
レマは表情を無くし、遂に目を瞑ってしまった。どうやら意識がなくなったようだ。
 
「え、し、死んじゃったの⁉︎嘘でしょ⁉︎」
 
赤髪の女やその他諸々はわたわたと慌てていた。俺はそいつらにうるさい、と制止し、急いで脈を計り息を確認する。
「…息はあるから大丈夫だ」
 
この場にいた全員がホッと息をついた。俺も死んではいなくて安心したが、安心するのはまだ早い。こいつの病気についてなにもわからないからだ。だがまずはこんな場所じゃなく病院に運ばねば…あ、そうだ。
 
「フラウィア…さん、こいつはいったいなんの病気を?」
 
「あ…えっと…ね。」
 
フラウィアさんは目を泳がしていた。どうやら言う事を躊躇っているようだ。だがしかし、病気の事がわからないとなにも解決できやしない。が、無理矢理聞くのは少々気が引けるな。さて、どうするか…。
 
「な、なんとかシルト病、なんだって‼︎」
 
驚いた、こっちがどうやって聞く前に答えが出てきたから。向こうも俺が考えていた事をわかってくれたのだろうか。
 
「なんとかシルト病って、なによそれ…聞いた事ないわよ?」
 
「うう、病気の名前ちゃんと覚えていなくて…。わかんないの…ごめんなさい…!」
 
フラウィアさんは申し訳なさそうにぺこぺこと何回も頭を下げていた。なんとかシルト病か…参ったな、正確な病名がわからないのでは対処の仕様がない。仕方ない、あまり頼りたくない人物NO,2を使うか。
 
「…いや、いい。もしかしたら、親が知っているかもしれないから。」
 
こういう時のために、小型通話機を持ってきておいて正解だったな。さっそく使うか。ちゃんと聞ければいいがな。
 
「親…?」
 
「ああ、言っていなかったか?俺の親は医者だ。…繋がった、…もしもし。」
ーつづくー
ス「…スフレ、登場はしたものの、空気だった気が…」
ア「…わかる、空気になると、辛い。」
ス「…あははははー…」
レマ「スフレさんが空気になったのってアウォー君のせいじゃねーの?前回と今回、主人公アウォー君だし。」
ア・ス「……」
レマ「あらあら、だんまりだ。あ、そうそう、ずっとしてなかったアウォー君の紹介いくでー」
ア「…今更か?」
レマ「まあまあ。」
 
アウォー
医者見習いと名乗る少年。父親は有名な医者だったりする。寝るとき以外常に眼鏡をかけている。それ以外でも眼鏡を外す時はあるがその時はずっと目を瞑っている。ほぼ無口で無表情だが、実はかなりのコミュ障。だから人と話すのが大の苦手…な癖に変なところでプライドが高い。趣味は医学を学ぶこと、変な薬を作ること。見た目は水色髪で目の色は青、微妙にタレ目。ちょっとダボダボな白衣を着ている。その白衣の裏には変な薬がいっぱい。